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変化_19

Side α 「もうばか!」 「あ…………」 突き飛ばされ、飛び出していく浅井の背中を見送って自分の失態に気が付く。 空を切った伸ばした手で堪らず目元を覆った。 「………何してんだ、俺」 浅井、顔真っ赤にさせてちょっと泣いてた。……また泣かせてしまった。 自然と溢れる溜息が家主の消えた静かな部屋に消えていく。 浅井は俺に対して一定の距離を取るくせに、他からの距離感には無防備だ。 今日だって………。 宮尾が浅井に戯れつくなんて昔からの事なのに、馬鹿みたいに苛ついた。 我慢なんて慣れてるはずだった。ずっとそんな恋をしていた。ずっと、ずっと何年も。 それなのに浅井を相手にすると全然ダメだ。 我慢がきかない、自分を抑えられない。衝動的に身体が動く。最近は特に。 俺が知ってる恋とは違う。 けど………。 「好きに、なってるんだ……本当に」 浅井には寂しさを埋めたいだけだと否定されたけれど、告げた気持ちは嘘なんかじゃない。 智と字見が並んで歩く光景を目にしても言う程寂しさは募らなかった。それよりも隣で必死に俺の気を紛らわそうと奮闘する浅井を見て、燻る愛しさが大きかった。 一度それに気が付くと浅井の行動一つ一つに、その気持ちが重なっていく。 「四年分か………まだまだ足りない、よな」 テーブルに投げ出された家の鍵。 スマホが見当たらないから多分持って行っているはずだと、メッセージを送った。 迎えに行こう。 迎えに行って、シュークリーム食いながら笑う顔が見たい。

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