暫く経っても送ったメッセージに返信がない。 既読になっているから返す気がないんだろう。 顔合わせたくないとか思ってそうだな……。 探しに行くかとテーブルにあった鍵を手にして外へと出る。 すれ違いで戻って来ても良いように施錠して鍵はポストへ入れた。 それから『探しに行く。鍵はポストに入れた。』とメッセージを送る。さっきと違ってそれは直ぐに既読にはならなかった。 さて、どこに行ったかな。 浅井足速いからな……割りと遠くに行ってそう。 βとそんなに体格の変わらない浅井は運動神経だって悪くない。成績だってどちらかと言えば良い方だ。 自分自身でΩらしくないΩだと豪語するぐらいには、確かに一見βに引けを取ったりはしない。 俺もバース性に拘りがない分、良い事だと思って近くで見てきた。 だけど時折それが危うく思える瞬間がある。 字見に押し倒されていた時も、宮尾に抱き締められても浅井には危機感がまるで無かった。 何でもないことのように済ませてしまう。 Ωである事にハンデを感じて欲しいわけではないが……少しは自覚を持つべきだと、これまた最近思うわけだ。 おまけに向こう見ずな所もある。 「………まあ、俺もαだからな。俺が悪いのかもしれないけど」 多少なりとあるよな、責任。 『小さくて可愛くて守ってあげたくなるのが好きだもんな、篠原は』って言われたっけ。 あながち外れてないか。 「………浅井だって俺より小さいしな」 あれだけ危ういと守ってやりたくなるし、可愛くも思えてしまう訳だし。 「………言っても信じないんだろうな、アイツは」 周囲を散策してもそれらしい姿は見当たらない。 ドラマや漫画じゃあるまいし、そうそう見つかるもんじゃないか。 大人しく家で待っていた方が良かったかと諦めかけた時、手に持っていたスマホが着信を知らせた。 浅井かと画面を見れば、着信は智からだった。 字見と付き合ってから、めっきり連絡が減っていたから久方ぶりに名前を見た。 「もしもし、どうし――」 『――み、みーちゃん…っ……どうし……ぼ、僕のせいで、連れてかれ…うっ……』 聞こえてきた声は気が動転しているらしく殆ど言葉になってない。 「智？落ち着け、どうした？連れて行かれたって誰が？」 『あさ、浅井くんが……っ！僕が、僕が絡まれてたら助けてくれて…でもそしたら浅井くんが……！』 「――今どこにいる？すぐ行く」