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変化_22

自分でも驚くほど低い声だった。 「今何処にいる?浅井を何処に連れて行った?」 『はぁ?何処もクソも今やっと家着いた所だっての。こっちは忙しいんだよ。いいか、ストーカー行為も大概にしとけよ!じゃあな』 「おい待――」 無情にも切られた通話。 慌てて掛け直したもののコールすら鳴らなくなった。 「…電源切られた………」 家って言っていた…どこの……? 浅井の家ってことか……? どうする、どうする………いや、悩んでる場合じゃない。 それしか手掛かりがないなら行くしかないだろ。 繋がらなくなったスマホをこれでもかと握り締めて、再び足を動かした。 全速力で駆けても道のりが遠い。 早く、早く、もっと早く……! 浅井の部屋はアパートの二階。 外階段を駆け上がって息を整える間もないまま、ドアノブに手を掛けた。 何度力を入れても鈍い音がするだけでそれは回らない。 俺が出た時のままドアには鍵が掛かっていた。 「………っ!」 やり場のない怒りを込めて思いきりドアへ拳を叩きつける。 「浅井…………!」 手を離さなければ、すぐに追い掛けていれば良かったと押し寄せるのは後悔ばかり。 どうする…どうする………スマホももう繋がらない……手掛かりなんてもう何も………。 もう一度強く拳を叩きつけると、今度は予想しなかった反応が中から返ってきた。 「――うるせーっての!人ん家のドア、バンバン叩くんじゃねーよ!」 「――!」 今の声、さっきの電話の……。 ガチャッと鍵が回る音がして、目の前のドアが開く。 僅かに開いた隙間に手を掛けて、それを思いきり開くと見たことのない男が不機嫌を顕にして立っていた。 「何だよ、お前。さっきからうるせーわ」 「……浅井は無事だろうな?」 「………ああ、お前さっきの電話の………。篠原、だっけ?」

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