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変化_24

side Ω 電源を落としたスマホをベッドに放り投げて、疼きの止まらない身体を抱えた。 熱い……苦し………前が、後ろが、下腹部が疼いて堪らない……。 「――薬、効かねーな……」 玄関の方から戻ってきた声はベッドの傍らに膝をついて、俺の顔を覗く。 「んっ……だ、め……全然……熱い……も、やだぁ……こんなの、知らな……」 「上級αのフェロモンを直に浴びた上に発情期も重なったからな……抑制剤が効かないのも無理ねーか」 「あっ……あぅ……っ…はぁ……」 「しかも榛葉(しんば)は上級ん中でもかなり強いフェロモン出せるからな……。アイツの連絡のお陰とは言え素直に感謝は出来ねーな」 大きな手が頭を撫でる感覚でさえ、今この身体は快楽と捉えてしまう。 「しゃわ……浴びた……ぃ……」 「首に腕回せ」 「んっ………」 言われた通り首に腕を回して、歩けない身体を浴室へと運んでもらった。 「脱がせるぞ」 「ん……っ……めん……ごめんなさ……」 「いいから、謝んなよ。宗一のせいじゃねーだろ?」 「………ぅ……ん」 「それより篠原、だっけ?追い返して良かったのか?アイツだろ、宗一が言ってたαって…」 篠原………篠原………探してくれたんだ。水野が連絡したのかな……そうだろうな、きっと。 アイツにも怪我させちゃった…。大丈夫だったかな……大丈夫か。篠原が手当したよな、多分。 「宗一?」 「……っ………ぅ……」 「……………それ辛いだろ?ヌくの手伝うか?」 それと指されるのは浅ましく主張する俺の愚息。 「い、い……っ……」 小さく首を振った。 そしたら「分かった」と短い返事の後、温かいシャワーが頭上から降ってくる。 「終わったら呼べよ。外で待ってる」 浴室のドアが静かに閉まって、一人だけの空間になる。 途端、シャワーの湯よりも熱い水滴が頬を流れた。 「…っ……うっ……うぅ……も、やだ……やだよ……」 初めてだった。 発情期にαを目の前にしたのは。 初めて、Ωの本能を垣間見た。 欲しくて欲しくて堪らなかった。抱かれたくて犯されたくて、堪らなかった。 篠原が好きなのに、篠原だけが好きなのに。 頭ではそう思っているのに、身体は目の前にしたαに縋り、媚びた。 初めて、Ωである事が怖くなった。 「やだ……っ…ぃやだ……うっ……俺もう……っ…がんばれ、ない……がんばれない、よぉ……」

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