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隣_1

side α もう一週間になる。 あれから浅井に会うことも連絡を取ることも出来てない。 大学終わりにはアパートに赴き、反応のないインターフォンを鳴らす。 一日一回はコールの鳴らない電話をして留守電を入れた。 そろそろストーカーになりかねないなと自身に呆れていたら、今朝鳴らないはずのコールがスマホから聴こえてきて、酷く驚いた。 電源が入ってる………発情期が終わったのか? 瞬間、気持ちは昂ぶったがそのコールが途切れる事はなかった。 出る気はないってことか………。 今から浅井の家に…………いや、でもまた会いたくないと拒絶されたら…………。 あんなに拒絶されたのは初めてだ…。 正直、智に失恋した時よりもショックが大きい。 家を飛び出し掛けて踏み留まる。 電源が入っているなら見てくれるかもしれないと一先ずメッセージを送った。 モヤモヤする気持ちのまま大学へ来たものの、頭は浅井のことでいっぱいだ。 やっぱり、行けば良かったな………。 間もなく講義が始まる。講義室の前では既に講師が準備を始めていた。 この講義終わったら浅井の所に行こう。 拒絶されたら、俺が何度も追い掛ければいい。 浅井がずっとそうしてきたように。 「――あの、」 徐に掛けられた声に俺の意識は一気に現実へ引き戻された。 「ここ座っても良いでしょうか…?」 見れば女学生が一人。 ここ、と指すのは俺の左隣の席だ。 浅井がいつも座る席。 もしかしたら来るかもしれないと、俺の鞄を置いて浅井の為に取っていた。この一週間、ずっと。 いつも左隣に座る浅井にどうしてそっちばかりなのかと訊いた事がある。 『講義中にさ、たまに篠原髪を耳にかける事あるんだけど、必ず左なんだ。その時って顔よく見えるから、こっちに座るのが好き。俺の特等席!』 『………お前講義全然聞いてないだろ。講師が泣くぞ』 『聞いてるって。講義中の癒やしなの。大事な癒やし』 とか言ってたっけな………。 「あー………ごめん、ここ座る奴いるから。他の席でお願いしてもいいかな?」 多分来ないだろうと心の何処かでは諦めているのに、譲れなかった。 …………特等席だもんな。

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