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隣_6

それでも逃げようと腕の中で必死に俺の胸を押し返そうとしてる。 「やだ、やだ……」 「追い掛けなくていいから。疲れたなら俺の事追い掛けなくていい。だからせめて逃げないで。ここに居て……俺が絶対離さないから」 「〜〜っ……な、何で………?何で篠原がそんな事言うの……?意味わかんな――」 「――悔しかった。浅井を見つけられなかったことも、俺以外のαを頼ったことも、言葉が届かないことも、全部悔しかった」 胸を押し返す力が少しだけ弱まった。 「俺が一番浅井の近くに居たのに………お前が辛い時側にいる権利さえないんだって思い知らされて悔しかったんだよ」 「……っ…………」 息の詰まる音に胸元の顔を覗いた。 歯を食いしばって瞳に溜まった涙を我慢してる。 「なあ、智の代わりじゃない。あの二人を見ても寂しさなんてもう感じない。それよりも浅井の隣に居られない方がよっぽど寂しい」 「う、うそだ………」 「嘘じゃない。嘘だったらこんなに必死にならない。………浅井、約束覚えてるか?逃げないって前に言ったよな?」 「――っ!や、待って、言わないで…」 押し返すのを止めた手が耳を塞ごうとして、させてたまるかとそれを掴んだ。 「――好きだ」 「ぁ………っ……」 「浅井の事好きになった。まだ足りないかもしれない……それでもちゃんとお前と向き合って、今は自信を持って好きだって言える」 堪えていた涙がボロボロと零れ落ちて、俺の服に滲みを作っていく。 「振ってもいい。浅井の六十九回の記録を超えるぐらい何度も告白するから」 「〜〜っ…ぅ……」 「何回振ったっていいよ。でも逃げないでくれ。そう約束しただろ?」 浅井がぎゅっと目を閉じると涙は更に量を増した。 「……っ……だ………そんなの、むり…だ…よ……。振る、とか……できない、……おれ、できない………」 「浅井……」 「でも……っ……で、も………だって、だって……俺、こんなにすきなのに……篠原以外のαに、抱かれたいって……犯されたいって……思っちゃったもん……っ……こんな、も…やだ……っ…」

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