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隣_7

まるで子供のように声を上げて泣き出した浅井。 手を離して宥める様に背中を擦った。 「うっ……ぅ……おれ、何回も呼んだんだ……篠原って……でも、でも……αの、フェロモン嗅いだら…頭ぼーっとして、何も考えらんなくて……っ…ただ中に、ほしくって……おれ、おれ……篠原のことがすきなのに……!」 「うん、浅井は悪くないよ。悪いのはそこに居なかった俺だ。ごめんな、呼んでくれてたのに……」 「違っ……おれ、おれが……」 「違わない。だってもしそこに俺が居たら、浅井は絶対俺を選ぶだろ?違うか?」 わざとらしい問い掛けに浅井は懸命に首を振る。 「ほらな。だから浅井は悪くないよ」 「うっ…、うぅ……」 「こら、あんまり目擦るなよ。赤くなるぞ」 「だって…ぇ……っ……」 「な、家入っていい?ここじゃなんだし………何があったのかちゃんと聞かせて。大丈夫、何があっても何をされていても嫌いになったりしないから。な?」 「…………ぅ、…うん」 盛大に鼻を啜りながら頷いた浅井を、横抱きに持ち上げるとボロボロと落ちていた涙が止まった。 「――え!?嘘、待って、無理!無理だから!離して、降ろして!」 「ダーメ。絶対離さないって言った」 「そんな……こんな物理的な意味……!?」 「精神的にも物理的にも、どっちもだな。首に手回して、落ちるから」 ぶんぶんと音が鳴るんじゃないかと思うぐらい首を横に振った浅井だけど、それでも俺が早くと促すとおずおずと手を回してくる。 「恥ずかし……」 「もっとくっついてもいいぞ」 「無理、無理です……絶対無理……」 小刻みに震える身体を抱えたまま、階段を上がり切って、浅井の家の前で立ち止まり、降ろしてやる。 「あ、鍵……」 と慌てて鞄から鍵を探す浅井をよそ目に、目の前のドアを見ていると沸々と感情が煮えたぎってきた。 …………やっぱあの男、ムカつく。 俺を追い返したあの男の顔を鮮明に思い出せる。 浅井が俺よりも頼りにするα、か……。 「あった!今開けるから…………どうぞ」 ずっと拒まれていたドアが開いて、浅井が俺を迎え入れてくれる。 嬉しさと、悔しさと何とも言えない感情で胸が苦しい。 抑えないと、我慢しないと、浅井を怖がらせないように。 頭では分かっているのに、身体は勝手に動いていく。 「――わ、な、何?」 リビングへと抜けていこうとする背中を引き寄せて、後ろから抱え込むように腕を回す。 「なあ……アイツ、誰?あの男って浅井の何なの?」

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