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隣_10
浅井が言うには絡んでいた男達は四人。その中で上級αが一人。
バース性の中で位が高いとされるα。そのαの中でも上級αと分類される者がいる。上級αはより優れている事はもちろんだが、大きな特徴として自身のフェロモンでΩの発情を誘発させる事が出来るらしい。つまりいつでも好きな時にΩを孕ませる事が可能だと言う事。
あくまで俺も知識として知っているだけで、実際に上級αに会ったことはない。
だけど浅井の話を聞くかぎり、概ねその知識は間違ってないようだ。
「初めて上級αのフェロモン浴びた……ちょうど発情期も始まり掛けてたってのもあるけど、俺、あんなに頭ぼーっとしたの初めてで………何も考えらんなかった……。普段の発情期なんて比にならないぐらい………」
丸くなっていた背中が更に縮こまって、浅井がひどく小さく見えた。
「ただ欲しくなって……身体に触れた手とか凄く心地良くて……っ……」
智から男達を引き離した後、浅井はホテルへと連れ込まれたらしい。そこからの記憶が朧気だと言う。
「気持ちいいのと嫌なのとで頭ぐちゃぐちゃになってて、上級αの男が俺の服脱がせながら名前訊いてきたから、素直に答えたんだ……。そしたら途端に男の手が止まって……兄さんの、二番目の兄さんの名前が出てきたから兄弟だって答えた」
そうしたら男は脱がせた服を着せ、どこかに電話を掛けたと思ったら直ぐにお兄さんが駆けつけたと言うのが全貌なのだそうだ。
「そのまま兄さんに連れて帰ってもらったんだ…」
「お兄さんとその男が友人だったってことか?」
「詳しくは分かんない……。兄さんも教えてくれなかったし…………」
「そっか」
話し終えたことで少し肩の力が抜けたのか浅井は小さく息を吐いた。
「あとはずっと発情期に耐えてた……いつもなら効く抑制剤も全然効かなかったから……。でもそんな事より……発情期なんかよりも篠原以外を欲しがった自分が嫌で……っ………」
「………うん」
「俺、Ωらしくない自分が嫌だった……。発情期だって薬飲んじゃえば全然しんどくないし……ずっと水野みたいなΩらしいΩに生まれたかったって思ってたのに………それなのに……」
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