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隣_11

立てた膝に顔を埋めて、浅井は言葉を詰まらせた。 「……ありがとう、話してくれて」 「………っ……ん」 鼻を啜る音がする。 「浅井、ここきて」 と俺の呼びかけに顔を上げた浅井へ指したのは俺の膝の上。 「……?え、どこ?」 「膝の上」 グズグズの顔しながら驚きに見開かれる目。 「…………え、無理。俺死んじゃう……心臓破裂する、絶対」 「大丈夫だって。頼む」 「大丈夫じゃない。絶対大丈夫じゃない。無理、無理」 立ち上がって離れていこうとする浅井の手を取る。このまま簡単に引き寄せる事も出来るが、それじゃ意味がない。 「逃げるのはなし」 「いや、だって……」 「浅井、おいで」 「うっ…………」 俺は知ってる、浅井が押しに弱いって。 「………………ずるい、篠原」 「はは、俺もそう思う」 取った手の指と指を絡めて力を込めると、浅井の身体は大袈裟なほど跳ね上がった。少しだけその手を引いてやると、浅井は観念したようにゆっくりと距離を縮めて、膝の上に腰を降ろす。俺に背中を向けて。 「そっちじゃなくて、こっち向いて」 「そ、それだけは……本当無理です。これで許して」 「だめ。俺に向かされるのと自分で向くのどっちがいい?」 「………自分で向く」 渋々身体を回した浅井は俺と向き合う形になって、不服そうな表情を見せる。視線は下に向けられ、重ならない。 膨らんだ頬に両手を添えて、浅井の視界いっぱいに映り込んでやる。 「あ……近……っ…」 「今、俺の事考えてる?」 「え……ぅ、うん……」 「俺の事で頭いっぱいになった?」 ぎゅっと目を閉じてコクコクと頷いた浅井を見て、可愛いと思ってしまう自分は意地が悪いのかもしれない。 見守る愛なんてどの口で言ってたんだか。 こんなにも触れたくて、独占したくて堪らないくせに。

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