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隣_16
コツンと合わさった額と額。
「……今日泊まっていい?」
「え、ここに……?」
「大丈夫だって。襲ったりしないから。ただ今日は離したくない、離れたくないから」
お願い、と間近で目を覗き込まれた瞬間には全身の血が沸騰しそうだった。
「…………本当に何もなし、だから」
「ん、分かってるって。飯とかどうしてんの?食べ行く?昼飯食べ損ねたから腹減った」
「あ……俺いつも自分で作ってる、けど…………食べる?」
「料理出来んだ?知らなかった……じゃあ食材買いに行くか。俺も作るの手伝うよ」
ずっと離れない手も、一緒に行ったスーパーも、並んで立ったキッチンも、同じベッドで寝たことも全部初めてで……多分俺の心臓は人生で最も速い時を刻んだ。
長い夜が明けて、篠原と歩いた通学路は今までとはまるで違う景色に見える。
「ニヤニヤしてる」
「へへ、だって幸せなんだもん」
「じゃあ幸せついでに手でも繋ぐか?」
「そ、それはまだハードルが高い……」
昨日の夜も思ったけれど、篠原は意外とくっつきたがるらしい。嬉しくないわけじゃないけど、心臓が保たないので俺としては一定の距離が欲しいところ……。
「同じベッドで寝たくせに?」
「そ、それは篠原が離してくれないから……」
「はいはい。寝顔初めて見たけど、幼く見えるな」
「なっ…………か、勝手に見ないで……」
「お前だって朝俺より先に起きて見てただろ?」
ば、バレてる…………。
「狸寝入り……」
「キスしてこないかなって期待して待ってた」
「す、するわけないだろ!そんな寝込み襲うみたいな……」
「俺はしたよ」
「え!?し、したの……?」
確かに昨日の夜は俺の方が先に寝ちゃって、気付けば朝だったから全然記憶にないけど。
二回目のキス……篠原とのキス、全部覚えておきたかったな……。
なんて少し気落ちした俺の横で篠原は肩を震わせた。
「ごめん、嘘。してない」
「え……してないの……?」
「してない、してない。そんなに落ち込んだ顔すると思わなかった、ごめん」
とか言いつつ、めちゃくちゃ笑ってる。
「何か篠原意地悪だ……」
「ん?」
「だって何か全然違う……水野の事そんな風に揶揄ったりしなかった」
「そりゃそうだろ。だって…………今は浅井が好きなんだ。智を好きな俺じゃない。あとは俺もちょっと舞い上がってるから、照れ隠し」
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