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隣_17

ほんのり色付いた頬が見えて、俺の頬も釣られて熱くなるのを感じる。 目と目が合って篠原が微笑んだ刹那、その姿が視界から消えた。いや篠原が消えたんじゃない。俺の身体が何かの衝撃で揺らいだんだ。 「――浅井くんっ!!」 ………何でコイツいつも突進してくんの? 身体にぎゅっと抱きつく水野を見る俺の目は、氷より冷たいと思う。 「何で昨日帰っちゃったの!?待っててって言ったのに!」 不満を口にする水野はこれでもかと腕を締め付けてくる。 案外力が強くて息苦しい。 「はっなせよ!苦しいっての!」 「あ、浅井くんだ!いつもの浅井くん!良かったー!だめ!今日はもう逃さない!絶対逃さないから!」 ちょ、マジで息苦しんだけど! 「逃げねーから離せっての!」 渋々と言った様子で水野は拘束を解き、俺は大きく息を吸った。 死ぬかと思った、マジで。 「おはよう、浅井くん!」 「………はよ」 「その冷たい感じ、うんうん、いつもの浅井くんだ」 何で冷たくされて喜んでんだ?さてはドM? つーか冷たくしてたの気付いてたんだな……てっきり鈍感すぎて気付いてないと思ってた。 「みーちゃんもおはよう!」 「ん、おはよう」 何となく挨拶を返す篠原の顔が見たくなくて目を逸らした。 篠原が水野に笑いかけるなんて見慣れた光景だけど、何か今はモヤモヤしそうで嫌だった。 逸らした視線の先、水野の背後に見えたデカい人影。 気配が全くしなかったから一瞬肩を跳ね上がらせてしまったが、よく見れば欠伸をする字見が興味なさそうに天を仰いでいる。 「びっ、くりした…………声ぐらい出せよ」 「ふぁ〜……ねむ…………」 「いや聞けよ、話」 清々しいほどのスルー。 マジで水野以外興味なさすぎだろ、コイツ。

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