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隣_20

俺と字見を置いてけぼりに話はどんどん進んでいく。 「善は急げって言うし、今日の講義終わり皆でどっか行こうよ!」 「俺はバイトないしいいけど……浅井は?」 そんな事訊かなくたって篠原なら俺に予定が無いことぐらい知ってるくせに。予定はない、ないけど……。 「俺は……」 「――俺は行かない」 渋る俺の言葉を遮ったのは不機嫌すぎる字見の声。 「えー!?何で?絶対楽しいよ?」 「無理、時間の無駄」 「あ、待ってよ!」 聞く耳持たずって感じで字見はL棟の構内へと向かって行く。 「もう!ぜーったい連れて来るから、後で門の所に集合ね!」 そう言い残した水野も字見の背中を追って行った。 …………え、俺の意見は? 「残念ながら拒否権はなさそうだな」 肩で笑う篠原は楽しそうだ。 「……俺行くなんて言ってないのに」 「出掛けるの嫌?」 出掛けること自体って言うよりは水野と篠原って組み合わせが……余計な事考えそうだし、とは言えない。 「……ううん、楽しみ。篠原と一緒だし。一緒なら俺幸せだもん」 「…………あのさ」 「?」 「……いや、何でもない」 「え、気になる……」 「いいよ、今はいい。それよりお前さっき字見のこと格好良いとか思ったろ?」 突然見透かされた心に内心ドキッとした。 「え、え?そんなまさか……」 「誤魔化しても無駄だぞ。浅井はすぐ顔に出る」 そう言った篠原の指先が俺の頬を突く。 「顔、真っ赤だった」 「うっ…………。だってアイツがあんな風に笑うなんて思ってなくて、ちょっと油断したって言うか、その、でも篠原の格好良さには全然勝てない!篠原が一番格好良い!」 「ふーん、一番か」 お、怒ってんのかな?無表情で見下されると全然分かんない。

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