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隣_23
ずっと水野が羨ましかった。
どうせなら水野みたいなΩらしいΩに生まれたかったって思ってた。
そしたら、篠原に大切にしてもらえるのにって。
でもきっと水野は俺が思っていたよりも多くの危険と常に隣り合わせにいるんだ。
今までも、これからもずっと。
そう思ったら身体が勝手に動いて、纏わりつく腕を外すはずだった手を水野の頭の上で二、三回跳ねさせてしまった。
「え?」
「あ……」
驚いた表情の水野が俺を見上げる。
そりゃそうだ。俺自身が一番驚いた。
「…………お、俺は別にお前のために助けたんじゃなくて、自分のためにやったんだ。あそこで見捨てたら篠原に嫌われそうだったし、だからお前に謝られる筋合いなんてない」
そう、そうだ。俺はこれが言いたかっただけで。
「えへへ、浅井くんは優しいなぁ。ありがとう。浅井くんになら安心してみーちゃんの事任せられるや」
決して絆されたとかじゃない。
「お前に任せられなくたって俺は――」
「――僕ね、本当は気付いてたんだ。みーちゃんが僕のこと好きだって。ずっと昔から」
俺の胸元に額を当てながら、水野はぽつりと言葉吐き出した。
「子供の頃からずっと一緒に居て、さすがに僕だって気付かないほど馬鹿じゃない。もちろん嬉しかったし、僕もね、好きになってみようって努力はしたんだ」
「…………」
「でもダメだった。やっぱり僕の中でみーちゃんはお兄ちゃんって枠から外れなくて、その内みーちゃんも勘違いしてるだけなんじゃないかって目を背けちゃった」
酷いよね、と呟いた声は自嘲気味に笑う。
「僕はみーちゃんの気持ちに応えられなかった。でも大切な人に変わりはないから、幸せになってほしいって思う。……きっと浅井くんなら、みーちゃんの事幸せにしてくれるって信じてる」
最後にお願いね、と付け足され胸元から上がった顔は清々しい笑いを見せた。
「そんなの当たり前だし。篠原の事は絶対幸せにするし。……あと篠原の気持ちは本物だったから、勘違いなんて言うなよ。篠原はお前の事本気で好きだった」
「…………うん、分かってる。やっぱり浅井くんは優しい。ね、もっと頭撫でて」
「は?嫌だよ、もういいだろ。さっさと離れろって!」
「えー?お願い!もう一回だけ!」
調子に乗りやがって……今度こそ引き剥がしてやる!
と水野との攻防を繰り広げる中、俺達に近付く人影が一つ。
「――君達、仲いいんだね。もしかして恋人同士だった?」
聞き覚えのある嫌な声に俺達は二人揃って動きを止め、声の方へと視線を向ける。
「やあ、この間はどうも」
「あ…………」
その姿を目に入れただけで、嫌な汗が全身から吹き出すような感覚が襲う。
コイツ、あの時の上級α…………。
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