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隣_24
「あはは、そんなあからさまに怯えた顔しないでよ。結局未遂で終わったわけだしさ」
何でここに……?
胡散臭い笑顔を見せる男。
名前は確か榛葉って兄さんが言ってた気がする。
「身体はもう平気?俺のフェロモン相当強いらしいからさ。それに君、ちょうど発情期も近かったみたいだし」
「……べ、つにあのぐらい何ともない」
「そっか、そっか」
それは良かったと嘘臭い言葉が吐き出されたのと同時に、俺の身体に巻き付いていた腕が急に離れて、水野が俺と榛葉の間に立ち憚るように身を翻した。
「……なーに?」
「もう浅井くんに近付かないでください」
「はは、何それ。手出そうとしてる訳じゃないし、お話するぐらい許してよ」
「だめです!」
小さい背中で広げる両腕は微かに震えてる。
「困ったなぁ。用があるのは君じゃなくて、後ろの宗一くんなんだけど。もっと言うと宗一くんのお兄さんに用があるんだよ。邪魔しないでくれると嬉しいな」
「嫌です!帰ってください!」
「うーん……困ったなぁ」
何てまるでそんな素振りもないくせに。
「ああ、そうだ。じゃあ今日は君が襲われてみる?俺は宗一くんに用があるから遊んであげられないけど、君が発情すれば皆相手してくれると思うな」
「え…………?」
刹那、鼻を擽った甘ったるい香りに咄嗟に水野の口と鼻を両手で覆った。
「――んんっ!?んーっ!」
「ばか、息止めろ!コイツのフェロモン嗅いだら発情状態になるから!」
本当、世話の焼ける……。
「自分よりお友達優先なんだね。さすが宗久 の弟、そういう所そっくりだね」
息を止め続けるのだって限界がある。早く逃げないと……。
「宗久の機嫌損ねちゃってさ。君に手出したからなんだけど、全然連絡取れなくなっちゃってね。俺的にそれはすごく困るんだよ」
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