111 / 139

隣_25

だから俺の方から連絡を取ってほしいのだと榛葉は提案をしてくる。 宗久兄さんとどういう関係なのか知らないけど、自由奔放な兄さんの性格上、一度決めたら絶対に貫き通す人だ。 どれだけ俺が間を取り持ったって無駄に決まってる。 それに出来ればこの榛葉って奴と関わり合いたくないし……。 息を止めているから声を出せず、数回首を横に振った。 「どうしても?」 念を押されたって返答に変わりはない。 「そっか。じゃあさ……」 言葉を切った榛葉の目が、まるで色を変えたように鋭い眼光で俺を射抜いた。 「もう一度君のこと拐えって犯しちゃえば、慌てて来てくれるかな」 あ、コイツ、やばい…………。 そう悟った一瞬に榛葉が僅かに開いていた距離を一気に詰めて、大きな手が腕を掴もうと伸びてくる。 もちろん逃げようと後退したけど、水野を連れ立っているから足が縺れて榛葉の動きの速さについていけない。 やば、間に合わない、捕まる……! 「そんなに怯えられるとめちゃくちゃにしたくなるよ」 そう呟いた榛葉はさっきまでの浮かべていた嘘臭い笑顔とはまた違う、厭らしい笑みを溢した。 あと数センチで俺の腕に触れるはずだった榛葉の手。それは突然動きを止めた。 視界の横から入ってきた別の手が、榛葉の手を掴んだからだ。 「――勝手に触るなよ」 手から腕を追って俺の目に映ったのは、息を切らした篠原の姿。 「し、篠原……!」 思わず叫んで、息をしてしまったと慌てたけどフェロモンの甘ったるい香りはもうしない。 「篠原……?ああ、君が篠原くんか」 「?」 「そんな怪訝な顔しないで。俺と君は初対面だよ。ただこの間宗一くんと少し遊んだ時に君の名前呼んでたから」

ともだちにシェアしよう!