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隣_30
彷徨わせた視線は優しく呼ばれた名前に引き戻される。
「俺とキスするの想像したりするって前に言ってたろ?それ、やってみせて」
「〜〜っ、じゃあ目、閉じて……」
逃げられないのは、逃してくれないのは分かってる。嘘ついたのも事実だし……。
「ん、どーぞ」
「…………」
素直に目を閉じてくれた篠原をまじまじと見る。
朝、寝顔見たときも思ったけどまつ毛長いし、パーツのバランスがいい。本当、格好良い……。
「す、するよ?本当にするからな……!」
「ん、いいよ」
左手を頬に添えただけで心臓が口から飛び出そうになる。
篠原の肌ってこんな感触なんだ……。
ゆっくりと顔を近付け、唇が触れ合う瞬間ぎゅっと目を閉じ、俺からの初めてのキスをする。
自分からしたからか重なる唇の感触がやけにリアルで、気恥ずかしい。
肌よりも唇の方が体温高い……柔らかくて気持ちいい……。
触れた時と同様にゆっくりと唇を離して目を開けると、至近距離で篠原と視線が合わさった。
「もう終わり?」
「終わり……」
「もっとヤラシイ想像しなかったのか?」
「ヤ……っ!」
「俺は、した」
「し、したの!?」
「するだろ。好きならするって前に俺に言ったのは浅井だろ?」
確かに言ったのような気がしなくもないような。
「………機嫌は直った?」
「直った。浅井、こっち来て」
返答をする間も与えられないままに腕を引かれた身体は、後ろから抱え込まれる形で篠原の腕の中へとおさめられる。
「わっ、今度は何!?」
「こーら、暴れんなって。浅井って見た目より軽いよな」
「そんな事……」
「どれどれ」
「ひゃぁっ!?な、や、ちょ……っ、ははは、脇腹、やめっ擽った…ぁ…」
「うーん、華奢じゃねーけど筋肉の付き方が薄いんだな」
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