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隣_32
「番なる方法は知ってるだろ?」
「う、うん……そのぐらいは。確か発情期のΩの項をαが噛めばいいんだよな?」
「そ。番関係を結ぶにはΩの発情期を待たなきゃならないだろ?それまでの間の繋ぎとして項にキスマークを付けて、Ωの匂いを隠しておく。それがこのお守りってやつ」
「お守り……」
「もちろんただのカモフラージュだし、完全に隠し切ることは出来ない。上級αなら発情期中のΩも隠せるかもしれないけどな。その辺はどれ程効力あるのか俺も知らない」
カモフラージュ……そんな事出来るなんて全然知らなかった。
「ただこのお守りってやつには条件があって……互いに想いが通じ合ってないとダメなんだ。まあ元々番うまでの繋ぎなんだし、想い合ってることが前提だしな」
「そ、うなんだ……。何かその、番とかってあんまり考えた事なかったって言うか、あんまり自分には関係ない事だと思ってたって言うか……」
篠原に好きになってもらうのに必死で、正直その先のことなんて全く考えてなくて……。
だって今でさえ、本当は夢なんじゃないかって思ってる。
「……ただの気休めかもしれないけど、少しでも浅井のこと守れるならしたい……。さすがに今すぐに番うわけにはいかないから。大学卒業して就職してから……だからそれまで、ここに付けさせてほしい」
篠原の吐息が項に掛かって、全身がゾクゾクと震えた。
「……っ……は、ははっ、俺なんか勘違いしてるのかな?篠原が俺と番いたいって言ってるように聞こえる……。俺やっぱ都合の良い長い夢見てんのかも……」
「夢じゃないし、勘違いでもない。そう言った、浅井と番になりたいって言ったんだ」
鼻の奥がツンとして俺は立てた膝に顔を埋めた。
俺、最近泣いてばっか……涙腺壊れたのかな……。
「浅井?もしかして泣いてる?結構泣き虫だよな、お前って」
「うぅ……俺、明日死ぬのかも……幸せすぎて明日死んじゃうんだ……」
俺としては至極真面目な言葉だったんだけど、篠原は何だそれと背中で笑ってる。
「わ、笑うなよぉ……」
「いや、だって……はは、そんなんじゃ命がいくつあっても足りないぞ」
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