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隣_36

その場にしゃがみ込んだ臣海は自分の膝の上に頬杖をついて、飽きれた表情を見せる。 「人ん家でやらしー事すんなよ、千歌の教育に悪いから」 「やっ……!?し、してない!」 「へえ、襟元縒れてるけど?」 「!?」 指摘された襟元を両手で握り込めば、臣海は唐突に笑い始めて、俺は何事だと首を傾げた。 「ふっ、行動が単純」 やっぱり可愛げがない……。 ああ、でも笑った顔似てるな。なんてジーッと顔を見つめていたら、視線に気付かれた途端笑顔が引っ込んで、また飽きれた顔が返ってくる。 「今、兄さんに似てるって思っただろ。止めろよな、キモい」 「兄弟なんだし普通似てるだろ?笑ったらもっと似てた、なあもう一回笑ってみて」 「ぜってー嫌だ」 「ケチ」 前に会った時散々だったから報復でもされるのかと思ったけどそんな素振りはなくて安心した。 それに何かあの時より雰囲気が柔らかい気がする。 「……良かったね、兄さんと付き合えて」 「え、な、何で知ってんの!?」 昨日の今日なのに……。 「いやこの状況的にどう考えてもそうでしょ。嬉しそうにニヤけちゃってさ。さっきすれ違った兄さんも勃ってんのバレバレだし、兄弟のそんな事情知りたくないから家では止めろよな」 「し、してないから!断じて変なことはしてない!」 「はいはい」 まるで信じてないと言わんばかりの空返事のあと、立ち上がり伸ばしてくる手に、何をするんだと身構えたのだけどそれは優しく俺の頭の上に乗せられて……予想外の行動に俺は固まったまま臣海を見上げた。 「…………この前の、アンタの言ったこと考えてみた。確かに俺も自分でダサいことしてんなって薄々思ってたから……あんな風に人からハッキリ言われて良かった。ありがと」 「気持ちの整理、ついた?」 「……ん」 「そっか……じゃあ篠原ともこれで仲良く――」 「――ああ、それに関してはまた別の問題が出来たから仲良しこよしってのは無理」 「別……?」 「でも意味もなく無視したりはもうしねーよ」

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