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恋人_1

消えては付け、また消えては途切れないように痕を残し続けて。 何度やっても恥ずかしさは無くならないけど、重ねる度に増していく安心感が心地良い。 お守りだと称されたキスマークは大学を卒業して就職するまで俺の項から消えることはなかった。 「――浅井、おーい浅井くーん?聞いてる?聞いてますかーぁ?」 「………………」 篠原の呼び掛けに頭まですっぽりと被った布団を握り締める。 「……いつまでそうしてるつもりなんだ?」 大学を卒業して就職した俺達は何と同棲を始めた。 元々俺が住んでいたアパートでも良かったけど、篠原がそこは二人で借りたいと言うので、二人で決めた新しい部屋。 広い部屋ってわけじゃないけど二人で探した物件だから、俺的には凄く気に入ってる。 まあ、それはさておき……。 「ずっと潜ってると息苦しいだろ?出ておいで」 布団の上から優しく撫でてくれる温もりを感じる。 恐る恐る顔だけ見せると、目が合った篠原が優しく微笑みかけてくれた。 「いい子だから、ちゃんと出ておいで」 「…………」 促され熱を帯びた身体を起こす。 この熱は決して布団に潜っていたから燻ってる訳じゃない。 これは、発情期による熱。 社会人になって二回目の発情期。 「ん、いい子いい子」 頬に触れてくれる篠原の手に頭がボーッとする。 気持ちいい……もっと、触られたい……。 「やっぱりまだ怖いか?薬、飲んでもいいぞ」 「……しのはら、仕事は……?」 「早退した。あと休暇の申請もしてきたから発情期終わるまでは一緒にいる」 「うぅ…………っ……」 「え、な、何で泣くんだよ?側に居るのもダメだったか?」 前回の発情期つまり社会人になって、同棲して初めての発情期。篠原がせっかく番になろうと言ってくれたのに俺のせいでそれは叶わなかった。 それどころか実はまだ……え、え、エッチすらまともにしてないと言う。 「だっ……てぇ……おれ、全然だめなのに……しのはら優しいから」 「そんなの当然だろ。ああ、もう発情期で情緒不安定になってるな……浅井はダメじゃないから泣くなよ、な?」 涙を拭ってくれる大きな手。こうして触れられる事を嬉しく思うのに、いざとなったら怖気づいてしまう自分が嫌だ。 撫でられるのもキスも嬉しい。抱き締められるのだって恥ずかしいけど全然嫌じゃない。 それなのに篠原の手が服の下に触れると、嫌な想像が頭を掠めて怖くなる。

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