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第一章・10
「兄ちゃん」
「ああもう! ジャガイモの皮も満足に剥けないで、生意気言うなよ!」
「兄ちゃん、お爺ちゃんとお婆ちゃんのところに。田舎に引っ越さない?」
その話か、と都はジャガイモを置いた。
弟たちは、田舎の祖父母にとても懐いている。
しかし、都は複雑な気持ちだ。
(確かに、もう母さんを当てにしないで田舎に来なさい、って言ってくれてるけど)
なにせ、自分らを放っている母方の祖父母だ。
彼らもまた、いつ都たち兄弟を放り出さないとも限らない。
「もう少し。もう少しだけ、待とう。母さん、明日にでも帰って来るかもしれないし」
「兄ちゃん……」
それきり何も言わず、弟はキッチンから出ていった。
「玉ねぎ、目に染みるなぁ」
都は涙をこらえながら、玉ねぎをざくざく切っていった。
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