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第二章・2

「一日、1万円。俺の希望をかなえてくれたら、それだけ払おう」  そろり、と都は後ろを振り向いた。  思いのほか真剣な表情の雄翔が、そこにはいた。  どんなに小銭を稼いでも、一日1万円にはとても届かない。  身体を売っても、5千円だ。 「話を、聞こうかな」  都は、雄翔に向き直った。 「便利屋は、俺一人に絞って欲しい。他の人間からの要望は、受けないでくれ」  1万円ももらえるなら、それは問題ないだろう。  都はうなずき、雄翔の次の言葉を待った。 「そして夏目には、俺の擬似恋人になって欲しいんだ」 「はぁ!?」  擬似恋人!? 「擬似、でも恋人には違いないよね! 神谷くん、僕のこと好きだったの!?」 「いや、それは無い。心配しないでくれ」  やけに冷静な、雄翔だ。  都だけが、取り乱していた。

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