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第二章・9
少しだけ、都は首を傾げた。
「今は……、僕のこと『夏目』じゃなくって『都』って呼んでくれれば、嬉しいかな」
その方が、距離が縮まるから。
「解った。じゃあ、都、と呼ぶよ」
「うん、ありがと」
帰りに雄翔は、このカフェの名物チーズケーキをワンホール買ってくれた。
「これ、ご家族へのおみやげ」
「いいの!? ありがとう、嬉しい!」
こんなに喜んでくれるとは思っていなかった、雄翔だ。
少し、驚いた。
「ケーキくらいで、大げさだなぁ」
「食べ盛りの弟が、二人いるんだ。すごく嬉しいよ」
「都も、ちゃんと食べてくれよ?」
「うん!」
手をつないで鼻血出したり、背伸びしてブラックコーヒー飲んだり、おみやげにケーキ買ってくれたり。
(雄翔って、そんなにイヤな人じゃないかも)
別れる時には、彼の印象は大きく変わっていた。
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