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第三章・6
「帰ろうか」
「うん。今日はどうするの? カフェに寄る?」
「それは……」
雄翔の言葉が途切れたので、都は彼の見ている方向に目を向けた。
教室のドア向こうに、一人の男子生徒が立っている。
そして都に、手招きして見せた。
「夏目、ちょっといい?」
何だろう。
都は、呼ばれるままに近づいた。
すると彼は、5千円を出して見せた。
都は、慌てた。
すぐ傍で、雄翔が見ているのだ。
身体まで売っていたことを、知られたくなかった。
「もう何でも屋はおしまい、って知ってるだろ?」
「神谷には、合わせてるのに?」
頼むよ、と男子生徒はしつこい。
「俺、夏目のこと好きなんだ。忘れられないんだ!」
「悪いけど僕、君の顔も名前も覚えてないから!」
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