27 / 65
第三章・8
「どうせ夏目は、俺のお下がりなんだ。それでよければ、せいぜい可愛がってやるんだな」
「どういう意味だ?」
「こいつ、一回5千円で身体売ってたんだぜ。俺なんか、3回も……」
その途端、雄翔は男子生徒の胸倉をつかんで締めあげた。
「……二度とその言葉、口にするな。もし言えば、この学校に居られなくしてやるぞ」
「ひッ!」
乱暴に襟から手を放し、雄翔は彼を睨みつけた。
「消えろ」
男子生徒は、後も見ずに廊下を駆けて行った。
一部始終を、都は見ていた。聞いていた。
足元が崩れ落ちるくらい、動揺していた。絶望していた。
(もうダメ。雄翔にバレた)
お坊ちゃんで潔癖なところのある彼は、僕をきっと許さないだろう。
軽蔑し、汚いものを見るような目で、ねめつけてくるだろう。
しかし、雄翔の声は柔らかかった。
ともだちにシェアしよう!