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第四章・4

 童心に帰ってはしゃいだ後は、静かに線香花火を焚いた。 「綺麗だな」 「あ、火玉落ちちゃった」  都は、ろうそくの明かりを頼りに花火を探した。 「残り、一本だよ」 「都、やっていいぞ」  こんな時はね、と都は花火を雄翔に持たせて、自分の手を添えた。  二人の重なった手の花火は、可愛らしい火花を散らし始めた。 「恋人なら、こうするんだよ」 「恋人なら、か」  線香花火の命は、はかない。  しかし、思い出に残るには充分過ぎた。  花火は燃え尽き、辺りには暗闇と静寂が戻ってきた。 「都」 「ん?」  すぐ近くに、雄翔の顔がある。  手を重ねたまま、二人はそっとキスをした。  少し煙の匂いのする、キスをした。

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