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第四章・7

「お風呂、ありがとう」 「はい、部屋着。これで、大丈夫かな」  都は湯上りの雄翔に、父にと買っておいたコットンの上下を渡した。 「いつか、帰って来るんじゃないか、って。まだ諦めきれないでいるんだ、僕」 「いいのか? お父さんの服を、俺が着ても」 「いいよ、雄翔なら」  特別な服を、雄翔は特別な思いで身につけた。  特別なはずなのに、安易な言葉しか出て来なかった。 「お父さん、帰って来るといいな」 「うん。ありがと」  それからの都は、妙にはしゃいだ様子で雄翔を自室へ招き入れた。 「たまたま昨日、掃除してたんだ。よかったぁ」 「都の部屋、グリーンがいっぱい。植物、好きなんだ?」 「世話すればするほど、応えてくれるからね」  はしゃいでサボテンの話なんかしながらも、都の胸は弾けそうに鳴っていた。  どうしよう。  部屋まで、招いちゃった。  ベッド、一つしかないのに!

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