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第四章・8

 飽きもせず、都のお喋りを聞いてくれる雄翔の目は、優しかった。 (とても今から、僕を抱くようには見えない)  試しに都は、クッションから立ち上がってベッドに腰かけてみた。  ベッドの上の都を見る雄翔の目つきが、少し変わった。  そして、すっと優雅な所作で立ち上がると、都の隣に掛けてきた。 「……!」 (あ、あの。あわ、あわ、はわわ……)  一瞬にして身を固くした都。  雄翔は、そんな都に一言だけ声をかけた。 「キス、してもいい?」 「え……」 (もうダメ。追い詰められてる、僕)  花火の時は、自然にキスできた。  キスなら。  キスだけなら……! 「いいよ」 「ありがとう」  雄翔は、都の肩を抱くとそっと唇を合わせてきた。

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