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第五章・3

 一日一日を共に過ごすうちに、都は雄翔に惹かれていった。  手をつなぐと、ドキドキした。  言葉を交わすと、幸せな気持ちになった。 「都、?」 「え、あ。ごめん!」 「今から、どこへ行こうか」 「え~っと……」  都は、考えた。 (これ以上深入りすると、マズいよね)    大富豪の御曹司αが、家庭崩壊した貧困Ωを本気で好きになったりするはずがない。  今なら、まだ傷が浅くて済む。    都は、雄翔との契約を解消しようと心に決めた。 (何か、彼がドン引きするようなことを言ってみたらどうだろう)  そうすれば、向こうから『もう辞める』と持ち出してくるかもしれない。

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