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第六章・9
雄翔の優しい笑顔が、心に浮かぶ。
それは、ふんわりと温かなはずなのに、都の胸をきりきりと締め付けた。
「ダメなのに。僕なんかが、雄翔のこと好きになったりしたら、ダメなのに!」
家柄が違う、家庭環境が違う、経済力が違う、そして何より。
「Ωの僕が、αの雄翔を好きになったりしたら、迷惑だよね……」
雄翔だって、何でも屋の疑似恋人だから、僕と付き合ってるだけなんだから。
僕で練習して、ホントの恋人ができた時に、上手にエスコートすることが目的なんだから。
泣けてくる。
涙が、止まらない。
でも。
「明日、ハッキリ言おう。もう、これ以上雄翔の傍にはいられない、って」
それが、雄翔のためだと思った。
潔く身を引こう、と都は決意した。
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