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第六章・10

「駅前に、新しいカフェがオープンしたらしいんだ」  そこへ行ってみよう、と雄翔は誘ってきたが、都はいつものカフェに行きたいと押した。  いつもの、カフェ。  初めて、雄翔と一緒に寄ったカフェだ。  終わりも、そこで決めたかった。  スタートとゴールをつなげて、永遠に忘れることのない思い出にしたかった。 「あの、ね。便利屋、もう終わりにしたいんだ」  都がそう切り出すと、雄翔は眼を見開いた。  何か言おうと唇が動きかけたが、都はそれを阻むように早口で告白した。 「僕、もうダメなんだ。雄翔のこと、本気で好きになっちゃった。だから、疑似恋人じゃいられない」 「都、それ本当?」 「前に雄翔言ったよね? 下手な感情移入をせずに、恋人を演じてくれる人物が欲しいんだ、って。感情ビシバシ入っちゃって、もう、無理」  あろうことか、都の目には涙まで浮かんできた。  雄翔はそれを見て、心を傷めた。

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