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第六章・13

 顔を上げてくれ、と言う雄翔の声は優しかった。 「今一通りざっと考えたんだけど。俺たちの気持ちは、同じだね?」 「お、同じ、って? 俺たち、って?」 「俺も、都のことが好きなんだ。疑似恋人、なんて言ってたけど、最初から都のことが大好きだった」 「う、嘘……」  だから、もう泣かないで。  雄翔の差し出したハンカチで、都は涙をぬぐった。 「都のこと、さらっちゃっていいかな? 学友として、海外に一緒に連れてってもいいかな?」 「学友? でも、弟たちが」 「お爺さんとお婆さんを、今こそ頼ってくれないか? 生活費は、俺の家が保証するよ」 「許嫁さんは?」 「会ったことも無い人だ。興味はないし、俺は自分のパートナーは自分で選ぶ」

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