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④監視が強化されたんですけど ─雷─8

… … …  診察してもらった結果、もっさん達はみんな揃ってすこぶる健康体だった。  血液検査の結果は後日だと言われたけど、見たところノミダニもお腹の虫も大丈夫だって。  獣医さんによると、あくまでも予想だけどスコ何とかって種類らしいもっさんは、元々飼いにゃんこだった可能性があるとかで……野良になった経緯を考えると泣きそうになっちまった。  そんな俺に、迅は「俺たちでめいっぱい可愛がろうな」と言ってくれてさらに泣けた。  動物病院の診察費は目玉が飛び出るほど高くて、それなのにゲージや餌を買ったりの支払いも全部迅がしてくれた。  「万年金欠のお前を頼るわけねぇだろ」って、迅はその事を見越して動物病院に行く前に銀行寄って、財布がパンパンになるくらいお金おろしててマジでかっこいいと思った。  こんなのモテねぇはずないって。  支払いしてくれたからかっこいいんじゃねぇ。 それをスマートにやりこなすとこがかっこいいんだ。  迅にはまるで不似合いな編み編みのバスケットでチビにゃんこ達を運んでるとこも、めちゃめちゃ優しい顔でもっさんを撫でてる横顔も、おっぱい飲んでるチビにゃんこ達に「早くカリカリ食えるようになれよ」と声を掛けてたイケボも、ぜんぶかっこ良かった。  隙あらば俺にキ、キスしてこなきゃなっ。 「──らーいにゃん。 ことごとく俺を除け者にしやがって。 なぁ? 迅雷コンビ結成してウキウキだってか?」 「あ痛てて……ッ」  勢い良く翼からガシッと肩を組まれて、まだ湿布を貼ってる俺の肩甲骨が悲鳴をあげた。  昨日は学校を休んで、俺と迅は一日にゃんこ達のために費やした。  それなのにコンビ結成でウキウキするわけねぇだろ。  てかコンビってなんの事だ。 「痛てぇ、翼……離れて」  いつものおふざけモードじゃねぇ俺の顔で、本気で痛がってると知った翼はすぐに離れてくれた。  同じ態勢で固い椅子に何時間も座ってなきゃなんねぇから、放課後までが結構キツかった。  昼休みに俺たちのクラスに合流した迅が「痛い?」と聞いてきたとき、俺は迷わず頷いて机にだらけて寝てたくらい。 「え、ごめんごめん。 何? 昨日そんなに激しかったのか?」 「激しかったってなんだよ。 ……まぁたぶん、思いっきり振りかぶった感じではあると思うけど」 「はぁっ? アイツ、初な雷にゃん相手にSMプレイ強要したの?」 「えぇ!? SMプレイ!? なんの話だ!」 「あれ、違うの? 昨日はガッコ休んで一日中SMプレイしたのかなと」 「どういう誤解だよ!!」  そそそそそ、そんなプレイするわけねぇだろ!!  ちょっとヤバい関係になっちまってんのは認める。 だってほら、毎日ヌきっこしたり、押し倒されたり、キ、キスしたり、ダチとは呼べねぇようなこと色々しちまってるもん。  だからってダチにその先は無えし、翼にそんな事をベラベラ話しちまうほど俺もバカじゃねぇ。  俺は、一昨日鉄パイプで殴られた一件を翼に話した。  説明が下手だから、それを話すだけで五分以上かかった。 「──あぁ、なるほどね。 ソイツら雷にゃんに恨み持ってたんだ」 「……そうみたい。 昨日やっと思い出したんだよな。 引っ越してきた初日に脛蹴りで撃退したヤンキー連中のこと」 「そーゆー事な〜。 てか雷にゃんは迅のお気に入りだって、もうこの辺には情報回ってるはずなんだけどねぇ」 「それ、あんまり関係ねぇと思うぞ。 俺こっちに来てから何回喧嘩沙汰になったか分かんねぇもん」 「血の気が多いのも考えもんだな、雷にゃん♡」 「ぅあぁッ♡ あっ……や、やめろよ!!」  今度はそっと俺の肩を抱いてきた翼が、エロピアスに変身してた事に気付けなかったのはバカだった。  耳にチュッとされて、ペロっと舐められて背中がゾクッとする。  違う。 ……いつものゾクッじゃねぇ。 「翼、やめろ」 「──迅……ッ」 「番犬現る〜」  遅えよ、迅!!  放課後はここに集まるって決まってんだから、センコーの呼び出しなんかシカトしてくれよ!  俺のこと監視してぇなら、ずっと付きまとってないとムジュンが発生するだろッ。  番犬・迅太郎が現れると、すかさず俺から離れる翼は学習能力が高え。 そこだけは褒めてやる。 「番犬言うなっつの。 あと、もう迅雷コンビ、じゃねぇから」 「え、なになに?」 「おい、迅……ッ、それ以上は……!」 「俺達のことは迅雷カップルって呼べ」 「迅ッッ」 「えぇ? マジ? 二人いつからそんな関係だったんだよ? てかもうヤッたの?」 「ヤッ……ヤッたって、ななな何を!?」  うっ……! あのヌきっこ大会は俺と迅の秘密にしとかねぇとマズイんじゃ……!?  あたふたする俺を膝に乗っけて、いつもの態勢になった迅が「迅雷カップル」の冗談を引きずってんのか、背後でフッと笑った。 「ヤッてねぇよ」 「なーんだ、残念」 「残念ってなんだよ、翼! 残念って!!」 「雷にゃん」 「なっ、なんだ、エロピアス」  迅の足椅子に座った俺のもとに、ゆっくり翼が近付いてくる。  さすがにもう日焼けは消えたけど、ナンパ野郎な顔面と耳と舌と唇に光るピアスがまさにチャラヤンキー。  真剣な顔で俺の顔を覗き込んでくるツラが、街中でナンパされてる女子みたいな気分にさせる。 「ヤッたら、絶対絶対、俺に報告してね」 「………………?」 「翼、マジでシメるぞ」 「えぇ〜雷にゃんの番犬こわ〜い。 そんなキレる事ねぇじゃ〜ん」 「何を報告するんだ? ヤッたらって、何? なぁなぁ、迅、ヤるってアレじゃねぇの?」 「違う」 「アレって何? 二人はどこまで進んでんの?」 「す、すす進むも何も俺たちは……」  えぇっっ!? ど、どこまでって、どこまで?  お互いのチン○をシコり合って、喉とか耳舐められてあんあん言わされて、迅にタトゥーも彫られたし、ベロ入りのキ、キスはした、けど、これ何かが進んでんの??  ダチ同士じゃ何もおかしくないらしいヌきっこ大会はともかく、そういえば俺たちは少しずつヤる事が過激になっていってる。  チラリ……と迅を振り返ってみた。  と、同時にポッキーを唇に刺される。 「雷にゃん、余計なこと言うなよ」 「ふぁいッ」  ふむ、……言っちゃダメなのか。  いや、ダメだよな。  てか言えるわけねぇよ、こっ恥ずかしくて。

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