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⑨恋慕 ─迅─⑨
俺だってもう少しマシな告白したかったっての。
柄にも無くムードの良さ気なホテルとか検索しまくってたし、ありきたりなシチュエーションに弱えってのが分かってからは王道を探った。
どう言えば伝わんのか、どのタイミングで言えばいいのか、脳細胞が少ねぇ雷に俺の気持ちがホンモノだって気付かせるにはどうしたらいいのか、考えに考えてたっつーの。
結局、こんな事になって勢いで告っちまって、雷のアワアワしてる姿を間近で見る羽目になったが後悔は無え。
このバカ雷にゃんは、告られたドキドキを胃痛と勘違いしてやがったけどな。
「お、俺、俺は……ッ、俺はぁぁ……ッ」
「俺は?」
ガッチリとホールドした細え腰が、震えてる。 これはどっちの意味でプルプルしてんだ?
脅したフリでもしねぇと、雷は本気で考えてくんねぇし答えてもくんねぇだろって目据わらせたんだが……ちょっとビビらせ過ぎたか?
顔面、耳、首筋まで真っ赤になってる。
俺を見てる猫目が、度を超えた緊張で潤んでる。
マズイ。 このまま雷を放っとくとキャパオーバーして思考停止する。 真っ赤なツラで機関車状態になるのは結構だが、それは返事を言ってからにしてくれ……!
「おい雷にゃ……」
「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待ってくれ、スマホを……! ベッドにあるからッ、スマホを取らせてくれッ」
「……なんでスマホが要るんだよ。 また先輩に頼るつもりか?」
「違ぇよ!! あの、その、あの、……告白する文章書いてんだよ……スマホのメモ帳に……」
「──は?」
不覚にも、俺の思考が停止した。
雷と見つめ合ったまま、ドラマのワンシーンみてぇに時が止まる。
いやだって、……それマジ? つまりそれは、ラブレターって事?
そんなの聞かされて喜ばねぇ男いる? 居ねぇよな?
好きなヤツが必死に……かどうかは分かんねぇけど、悩みながら何回も書いたり消したりしてしたためるっていう、アレだよな?
今時そんな可愛い事するヤツ居ねぇよ。
俺が相手してきた女はみんな、LINEとかSNSのIDメモったやつをペッと渡してくるくらいだったぞ。 もしくは流出しまくった俺の番号にぶっつけで掛けてくる強者ばっか。
……うーわ。 照れる。
まだ返事聞いてねぇのに死ぬほど照れんだけど。
「はぁ、……。 お前……どこまで可愛いんだよ。 どっちでもいいんだけど、そんなの見ないで言ってくれた方が俺は嬉しい。 雷にゃんがバカなの知ってっから、語彙力無えのは見逃してやる」
「おいッッ!! 俺が迅に告るかどうかは分かんねぇじゃん! 勝手に喜ぶな!!」
「十秒前の自分の発言忘れた? 「告白する文章書いた」って言ってたぞ。 だから俺は告られ待ち。 あー嬉しいなー」
「うぅぅーーッッ!!!!」
唇をわなわなさせた雷が吠えた。
ごめん、雷にゃん。 俺めちゃめちゃダセェ。
翼のニヤついた腹立つツラが浮かんじまうくらい、照れ隠しに巨大な虚勢張った。
あまりにも雷がバカで可愛くて。
太ももに乗っけてずっと撫で回してたいって願望はまさに今叶ってんのに、それだけじゃ足んなくなった。
あざとさが伝染した俺は、雷を抱きしめてサイドにかかった金髪を右耳にかけた。 そして、俺と同じ場所に光る二つのピアスに口付ける。
「雷にゃん、言えよ」
「うッッ……」
「俺は好き。 雷にゃんのことめちゃめちゃ好き」
「うぅッッ……!」
「雷にゃんは?」
「うぅぅ〜〜ッッ……!!」
「俺のこと好き? 嫌い?」
固いピアスは舌触りが良くねぇ。 だからってこんなこっ恥ずかしい事、面と向かって見つめ合いながらは言えなかった。
俺のこと好きか嫌いか、なんて……ダセェの極み。
唸るだけの雷に焦れたってのが正しいが、それにしたってハズイ事言ってる自覚はちゃんとある。
早く言えよ、雷にゃん。 俺どんどん情けねぇ男になってんだよ。 てかシチュエーションに弱えの俺の方じゃね?疑惑勃発。
これだけ言っても、雷は少しの間カチコチに固まったまま唸っていた。
分かりきった返事はどんな言葉でもいい。
カッコつけた台詞染みたのなんか望んでねぇんだよ。
メモ帳にしたためられたラブレターも猛烈に気になるが、今は離してやれねぇ。 ちょっと腕伸ばせば届く位置にあるシングルベッドに、視線さえやれねぇ。
バカ素直でバカ正直な、雷の言葉でいいから。
早く言えって──。
たまんなくなった俺は、雷をギュッと抱きしめた。
その時だ。
「〜〜ッッ好き!! 好きだよ!! 好きに決まってんだろ!! 嫌いだったらお前みたいにおっかねぇヤツ試したりするかよ!! き、嫌いだったらなぁ、迅の好みのギャルになれば好きになってくれるかもって、女になろうとなんてしねぇよ!! 捨てられたくねぇからって、ケツの穴に指入れてみたりしねぇよ!!」
「………………」
「バカ!! アホ!! ツンデレ!! イケメン!! イケボ!!」
「………………」
「俺の方が迅のこと好きなんだからな!! 二度とCカップ美乳ギャルに目移りすんじゃねぇぞ!! もし浮気したらチン○を緑に塗ってやる!! 分かったか!!」
「………………」
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