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⑪情交 ─迅─⑦(♡)

 誰かに見られてるわけでもねぇのに、カーテンを閉め忘れた事を今さら思い出して無意識に気を逸らそうとする俺。  そういう類のもんを必要以上にビビるはずの雷は、今日に限って俺の言う事を素直に聞いて〝可愛い〟を爆走中。  改めて、あの旅館で浮かれてたのは俺だけだったんだと反省した。  一つの事しか考えらんねぇ雷がキャパオーバーするくらいのドキドキを抱えてると、窓から誰かが覗いてるかもしれないという恐怖には怯えねぇって事が分かった。  対して俺は、めちゃめちゃ気になる。  俺の予定を狂わすのは雷だけで充分だ。 「あ、ッ……迅どこ行くんだッ」 「ローション持ってくる」 「えッ!? ろ、ろーしょん……ッ!? どこにあんの!?」 「鞄に入ってる」  突然ベッドから下りた俺を、縋るような寂しんぼの猫目が追い掛けてくる。  俺はおばけの覗き対策にカーテンを閉めて、斜め掛けの鞄からローションボトルを取り出した。  これはちゃんと調べて買った、アナル用。 もちろん使用経験は無い。 「お前……ッ、そんなもん持ち歩いてウロウロしてたのか!!」 「浣腸目的でイチジク持ち歩いてたヤツに言われたくねぇよ」 「ぐぬぅ……ッ、それはごもっとも……ッ!」 「フッ……」  俺が手にしたローションをまじまじと見てくるコイツの覚悟は、ついさっき確認したから何も問題無え。  揶揄ったのも、一人でやらせちまった罪悪感と〝もう勝手な事するなよ〟っていう釘刺しだったんだけど、まぁ単純バカな雷には伝わってないんだろうな。  ベッドに片膝を乗せて上がると、マットレスがもふっと沈む。  このベッドいいな。 デカさもクッション性もマジでいい。  いつか雷と住む日が来たら、ベッドだけは奮発しようと心に決める。  ただその前に、俺には一つやる事があった。  腰にタオルだけ巻いた姿で寝転んでいる、俺の無邪気な飼い猫に意思を問うめちゃくちゃ恥ずか死ぬ行為、今日で二回目じゃん。 「さーて、乳首開発の前に告りますか」 「ヒッ……!? いや迅さん、そ、そういうのって申告制導入しない方が……ッ」 「俺も緊張してんだよ」 「迅が……ッ? あの迅が……緊張ッ? 数々の伝説を残してきたヤリ迅が……ッ? 今も緊張って何?のツラして俺を睨んでる迅が……ッ? マジ……? 俺ついに告られんの……ッ? でも何回も好きって言ってくれてるよな……ッ? 改めて言うことでもなくね……ッ?」  ……それ心ン中で言ってるつもりなんだろ、バカ雷にゃん。  体を起こしながらブツブツ、ブツブツ。  俺だって緊張してるに決まってる。 先週のアレはどさくさ紛れだったし、あんなのが俺達のはじまりだなんてイヤだったんだよ。  暴走のおかげで〝好き〟って言いまくれるようになった。  躊躇なく雷に触りまくれるようになった。  耳元で囁いてガチ照れさせるっていう、特殊な嗜好も増えた。  別に今さら言うことでも無えとは思うんだが、総合的に見て俺がいま一番言わなきゃなんねぇ事は一つ。  雷と向き合って座り、小せえ両手を取って握る。  ポッとほっぺたをピンク色に染めた雷を可愛いと思い、打って変わった雰囲気に俺の方が呑まれそうになった。  濡れた金色の前髪から覗く目を真剣に見詰める。  好き。 雷にゃん、俺はお前の事が好き。  お前しか要らない。  俺はお前に好かれてたい。  バカ素直でバカ正直で危なっかしい雷にゃんを守るのは、俺しか居ねぇだろ。  死ぬまで養ってやるから、俺と一緒に居ろよ。 「──雷にゃん、俺と付き合って」

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