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⑪情交 ─迅─⑧※
──恥ずか死ぬ。 これは大分恥ずか死ぬやつ。
顔面が沸騰しそうだ。
体ン中も頭ン中もドキドキバクバクうるせぇし。
手汗もヤバイし。
雷はまた瞬き忘れてジッと見てくるし。
「………………」
「………………」
いや、なんか言えよ。
俺の最初で最後の告白なんだぞ、これは。
言いてぇ事をポロポロこぼす雷とは違って、簡潔かもしんねぇが俺は生まれて初めてこの台詞を言った。
結婚願望皆無だった俺に〝養いてぇ〟と思わせたヤツは、後にも先にも雷一人だけ。
何となく生きてければそれでいいと思ってたのに、俺にはすでに飼い猫が計五匹も居るんだ。 責任もそれだけのしかかる。
就職先見つけといて良かったってこんなにしみじみ思ってる俺は、何でもソツなくこなすなかなかの優良物件じゃねぇか?
……てか沈黙長えよ。
目からうるうる光線出さなくていいから、早くなんか言えって──。
「…………ッッシンプル!! ストレート!!」
「……ッ、……!」
小せぇ手がギュッと握り返してきたと同時に、野生の小熊並みのタックルを食らった。
ガバッと抱きついてきたチビ雷のタックルくらいじゃビクともしねぇが、俺はそのまま寝転んで細い体を腹の上に乗せる。
これ先週と同じじゃね?と半笑いで、感想よりもメインを寄越せとぷにぷにのほっぺたを摘んだ。
「……返事は?」
「ンヘッ、そんなのイエスしかねぇだろーッ♡」
「だよな。 即答しなかったら右ストレートもんだったぞ」
「えぇッ!? 暴力反対!!」
「冗談だ。 せいぜいデコピンくらいだな。 その後は調教っつーかお仕置きっつーか色々やってたかもだけど。 キツめに」
「……迅さん? それも充分暴力に入りますけどねぇ?」
人生初の告白が成就して、自分じゃどうにも出来ないくらい口元のニヤつきが治まんねぇ。
心がふわふわ浮ついた。
ふふふ、あはは、と俺達らしくねぇ甘い時が流れても恥ずかしくはなくて、雷を抱きしめて二回くらいゴロゴロっとベッドの上で転がった俺は文字通り浮かれてるよな。
イエスしかねぇんだって。 しかも即答だった。
俺の飼い猫は素直過ぎるがゆえのバカ。 打算計算無しの返事ってこんなに嬉しいもんなんだな。
腹の上で懐いてくる雷はめちゃめちゃ可愛い。
体丸ごと物理的に食っちまいたいくらい可愛い。
二人とも照れて、二人とも浮かれて、めでたく迅雷カップル誕生だ。
これでようやく、先に進める。
「体、温まってきたな」
「え? うん、いまポカポカぬくぬく♡ 迅にぎゅっされて、俺は照れ死ぬ寸前だけどな♡」
「……俺の手は?」
「ん?」
あー可愛い。 コイツ言うこと全部可愛いんだけど何なん?
俺を脳死させる雷語録でも作ってあんのか?
雷の顔の前に手のひらをやると、スリスリっと頬擦りしてきた。
はい、可愛い。 可愛いだけの生き物。
「うん、ぬくぬくじゃん?」
「じゃあ触っていいな」
「え……ッ、もしかして温まるまで待ってた感じ?」
「そ。 俺って優しい彼氏だろ」
「ま、マジかよ……えー♡ えー♡ うんうんッ、優しい! すき! 迅マジでかっけぇ! 最高の彼ピッピだ!」
「俺、雷にゃんにしか優しくねぇからな」
「……俺だけ?」
「てかずーっと言ってたと思うけど。 〝雷にゃんだから〟って。 俺がお前にしてきた事は全部そういう事」
「そういう……こういう……どういうこと??」
「あぁ、ごめん。 ややこしい言い方すると雷にゃんは頭がくるくるパーになるんだったな」
「なッ、なんだよバカにして!! バカなとこも可愛いって言ってくれ……んッ♡」
「可愛いよ」
「はぅぅ……ッ♡ んん……ッ♡」
「可愛いに決まってんだろ。 何回言わせんの」
雷は喋ってる途中でも、唇を舐めるとすぐにトロ顔する。 それに何回もやられちまった俺に、例外なんて無え。
許しを得たからにはいいだろって事で、雷が密かに好きなえちえち体位でその気になってもらう。
押し倒して不意打ちでキスをする。 これは雷がこっそり好きなやつ。
指で耳を刺激しながら軽く舌を絡ませて、甘ったるい空気をさらに濃厚なものに変えていく。
これに対する文句は一切受け付けない。
萎えたり半勃ちしたりでなかなか出番の無えムスコが、そろそろキレそうだって脳に誹謗中傷送ってくんだよ。
焦んなくてもいいけど、さすがにチキり過ぎだって。
「ここ、舐めてい?」
「あ、やッ……♡」
うっ……その声でもうヤバイ。
まだ柔らかい乳首を指先でツンとしただけで、トロ顔と啼き声のコンボ。
雷にゃんごめん。 返事聞いてらんねぇ。
キンキラキン頭をヨシヨシしながら、三十分前から舐めたくてしょうがなかったそれを舌先で転がす。
「あ……ッ、迅、……ち、ちくび、……舐めッ……?」
「はぁ、……可愛い。 乳首だけでイけるように育ててやっからな、雷にゃん」
「えぇッ!? ち、ちくびって育つのか……!?」
「分かんねぇけど、雷にゃんの感度だったら四、五回経験すればイけると思う」
「……あっ……♡ だ、だめだ、……迅ッ! ちくびハズい……ッ、恥ずかしいッ」
「好きなだけ鳴いてりゃいいよ。 そのうち鳴けなくなる」
「どゆこと……ッ? あッ♡ くすぐったい、ッ……♡ んッ……♡」
指と舌を使って少しずつ育てた左乳首が、小せえくせにツンと尖ってかたくなった。
乳首二回目にしてはめちゃめちゃ鳴いてくれる。 これが啼き声に変わるまで数分もかかんねぇと思うが、じっくりいく。
下手したら今までの俺の経験上、同性の雷が一番啼いてるかもしんねぇ。
そのせいで俺の忍耐力も大幅に削られてくんだけど。
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