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⑬クラスマッチ ─迅─②
「でも俺、不思議だったんだよなー。 このガッコは体育祭っつー学生のメインイベント無ぇんだなってさー」
メロンパンを口いっぱい頬張ってモグモグしているガキみてぇな恋人が、飲み込まねぇうちからペラペラ喋るんで粉が俺に飛んでくる。
浮気したら死者が出るかもって震えときながら、餌付けを再開するとすぐに機嫌が治る、そういう単純なとこマジで好き。
「四年前まではあったらしいよ。 俺らが問題行動ばっか起こすせいで無くなった。 はなから楽しみにしてる奴も居ねぇってのが、学校側からしたら致命的だよな」
雷にゃんの素朴な疑問には、ラグから立ち上がった翼が答えた。
この学校に限らず、高校生になってまで学校行事を楽しみにしてる奴なんて居るのか?
俺にはそこが理解不能なんだが、恋人を椅子代わりにしてるチビ助がまさにその人だった。
……雷にゃんがニコニコではしゃぐんなら、悪くねぇかもって考えを変えた俺は現金極まりない。
ただし一つ言いてぇのは、それが開催されなくなったのは上が原因だって事。 俺らは連帯責任背負わされてるだけ。
「……問題起こしたのは先輩連中だろ」
「そう言う迅も人のこと言えねぇじゃん。 一年の時はまだ血気盛んで……」
「あー、あー、昔話はやめてくれ。 黒歴史以外の何ものでもねぇよ」
「なになにッ? 一年の時は迅も暴れまくってたのかッ? 今こんなにおとなしいのにッ?」
……余計な事を言うな、悪友。
中学から上がったばっかの頃のイキったガキの話なんか、そこら辺に腐るほど転がってんだろ。
俺も例外じゃなかったってだけの話で、意味深にニヤつく翼の動向を目で追う雷にゃんには関係無ぇから。
「誰にでも黒歴史の一つや二つあるもんだ。 雷にゃんが目キラキラさせなくていいっての」
「いやいや何をおっしゃいますか! 迅が血気盛んだったってめちゃくちゃ興味ある!!」
「だよなー? 雷にゃんの知らねぇ迅だもんな?」
「そうそう! ……って、そこまで言っといて帰る気かよ、翼」
「お前らくっついてから遊んでくんねぇんだもーん」
ラグから立ち上がったのは、帰る気満々だったかららしい。
多分何も入ってねぇ薄っぺらい鞄を脇に抱えた翼は、「じゃあな〜」とゆるく挨拶して秘密基地を出て行った。
「ほんとに帰りやがったー!」
「いいじゃん、別に。 翼には翼の付き合いってのがあるんだ」
「むぅぅぅッ!」
「なに、俺じゃ不満なわけ?」
「えッ?」
「俺より翼がいいって? そういう事?」
「ち、違ッ……あっ……♡」
いちいち翼を目で追ってただけで気に食わねぇのに、出て行った扉を見つめてそんなに残念がられると、カレシの立場が無ぇぞ。
俺の黒歴史を匂わせて帰りやがったせいってのは分かってんだが、雷いわく〝ラブラブタイム〟到来に歓喜してくれてもいいじゃん。
「せっかく二人っきりになったんだ。 キスしたい」
「キ、ッ!? キ、キキキキスッ!? い、いやでも、俺いまメロンパン食ったし……!」
「それが何?」
「口ン中甘い、から……ッ!」
「いつもの事じゃん」
雷にゃんのほっぺたに触れて顔を寄せると、どうでもいい言い訳を並べたんでOKとみなした。
フェラを思い出すからってプリン味の棒付きキャンディーを敬遠したがる雷にゃんに、俺は毎日それを買い与えている。
複雑な顔で舐めた後の雷にゃんとのキスで、甘さの耐性は出来た。
今さらメロンパンごときの甘さなんか、どうって事ねぇ。 俺は雷にゃんの舌ごと食える。
「ンッ、ンンーーッッ♡」
「翼より俺だよな?」
「ん、んッ! んっ♡」
「俺がいいよな?」
「ンンッ! んッ、んッ♡」
「それ頷いてんの?」
「ンーッ♡ んむっ♡ むぅッ……♡」
上顎を舐め上げると、俺の肩に乗った手のひらに力がこもる。
雷にゃんはすぐにほっぺたを真っ赤にしてギュッと目を瞑るが、狭い空間の中を逃げ惑う短い舌を捕えて離さなかった。
上達する気のねぇ拙い舌使いだ。 興奮するなって方がおかしい。
クチュクチュピチャピチャと唾液の交わる卑猥な音を聞かせていくと、細い腰が我慢出来ねぇとばかりに揺れ始めて可愛い。
コイツはいずれ、キスだけでイけるようになる。
「ふ、はぁッ……♡ ふぅッ……ふぅッ……お前……ねちっこいって……」
「好きなくせに」
「なッ!? お、俺はなぁ、チュッくらいでいいんだって言っただろ! これはちょっとえちえち過ぎんの!」
「チン○反応しちまった?」
「い、いやそんなことは……ッ! あッ♡ ちょっ♡ 触んな……ッ」
唾液で濡れた唇を尖らせた雷にゃんの目は、たった数分のキスでうるうると濡れている。
その目を見つめながら股間に触ると、小さな膨らみを確認した。
ケツをモゾモゾさせてたのは、えちえちでねちっこいキスが原因の勃起。
俺はすかさずベルトを外し、パンツに染みを作ったナニを直に握った。
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