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第七話(鈴視点)

Side 鈴 はづくんもあんまり活動には参加しないーなんて言ったりしていたのに結構きちんとサークルの集まりをするって声をかければ普通に来てくれるんだよね。 あおちゃんに対していちいち噛みついたりはするものの途中で帰っちゃったりとかはしないし、まぁあくまでサークル活動と銘打って遊びに出掛ける時だけなんだけど。 それ以外の時は今みたいにすぐいなくなっちゃうから中々仲直り……いや、はづくんとあおちゃんの心の距離が縮まらないと言うか、あおちゃん自身は全く気にしてないみたいだからこの場合問題ははづくんの気持ちの問題なんだけど、俺としては2人とも大切な友達だし、できればサークル活動と銘打たなくても一緒に行動できたら嬉しいなと思ってるんだけど……。 いや、でもまぁそれだけあおちゃんが男の子だって言う衝撃がでかかったんだろうね、こればかりはもう本人達の問題だし俺がどうこう言える立場でもないしなぁ…… それにしても 「本当、今日も可愛いね、あおちゃん」 「うん、りんちゃんの言う通りどこからどう見ても可愛らしい女の子にしか見えへんわー」 「ありがとう、2人とも。春の新作のワンピースが出てね、思わず衝動買いしちゃったんだよね。絶対似合うと思ったから」 「おぉう、すごい自信。いや、まぁ普通に似合っているから全然良いんやけど。でもさ、あおちゃんって別に女の子になりたい訳やないんよね?」 「まぁね。小さい頃から姉のお下がりで女の子の服を着ていたから自然とそう言った服を着るのが自分の中で普通になっていただけだし、それに中学高校は普通に男の格好してたしね」 「そうなん?!」 「え、うん。流石に女子の制服着て学校には行けないでしょ」 「いや、藤堂なら女子の制服着て普通に登校してそうやけどな」 「いやいや、どんなイメージ持ってるのさ」 「やって、滅茶苦茶堂々と女装して大学来てるしなぁ」 「それも入学初日からね」 「あはは、これでも思春期の頃は少し悩んだりとかもしたんだよ。でもね、小さい頃から可愛い服を着るのが普通だったってのもあるけれど僕自身が可愛い服やモノを好きになっていたんだ。誰だって好きな恰好をしたいでしょ?それに似合うしね、女装をするのはただシンプルにそれだけが理由。まぁ、こういった結論を出せるようになったのは高校時代の友人の言葉のおかげでもあるんだけど。僕一人だったら多分大学生になった今も、もう女の子の格好はしてなかっただろうし」 「良い友達なんやね」 「うん、僕にとって最高の友達」 そう、微笑んだあおちゃんの顔は今までみたどんな笑顔よりも輝いていてその中にほんの少し照れが混じっていたのを見つけてちょっとだけ眩しいなって思った。 あ、今のあおちゃんの顔、すごく心当たりがある。 「へーじゃあ俺にとってのりんちゃんみたいな存在なんやな」 「へぁ!?」 俺があおちゃんの笑顔に思考が持っていかれていたら突然めーちゃんが爆弾発言を落としてきたので思わず変な言葉が漏れた。 「め、めーちゃん、な何を仰ってイルノデスカ」 「何で片言なん、だって俺、りんちゃんがいっちゃん好きやし、大事な友達や思ってんねんぞ、りんちゃんは違うんか?」 「いやいやいや、俺だってめーちゃんの事が世界で、ううん、宇宙で一番大好きやからね!!」 びっくりした、びっくりした!! いや、普通に考えてそうよな、普通に友達としてやんな、いやいやいや、何かあおちゃんの表情がいつも俺がめーちゃんに向ける表情に似てたから。 そう、まるで好きな人の話をする時の表情に…… そんな風に思っていたから突然のめーちゃんの言葉に思わずテンパってしまった訳だけれどそうやんな、普通の友達として一番大切的な話やったもんな、我ながら思考が思わず取っ散らかってしまったわ、危ない危ない。 「相変わらず仲が良いね、咲良くんと宮前くんは」 「高校の頃からの付き合いやしな、もうかれこれ3年目なるんか」 「うん、高校3年生の時からだからね、今年で3年目よ」 「へー意外だな。2人はもっと小さい頃からの付き合いだと思ってたよ」 「あ、それはづくんにも言われたな~」 やっと平常心を取り戻しつつ、そう答えれば「話を戻すとさ、」とあおちゃんが再び話し出す。 「そんな友人の存在のおかげでもう本心を隠したり、嘘をつくことをやめて自分の好きなように生きようって思ったんだ。だって一度きりの人生だからね、好きに生きなきゃ勿体ないじゃん」 「それもそのお友達さんの言葉?」 「うん。それに僕、普通に女の子が好きだし彼女もいたからねー」 「え!」 「まじか」 「ほんとほんと、これでも大人の階段昇ってるんだよ」 「あおちゃんの口からそんな言葉が出るなんて」 「あんまり想像できやんかったな……」 「君達は僕の事なんだと思っているのさ。確かにこんな格好しているけれど普通に中身は君達と同じ普通の男だよ。まぁ、この格好で言っても説得力はないだろうけれど」 「大人……」 「俺達とは違うな……」 あおちゃんの意外な一面に思わず俺とめーちゃんは2人揃って目を合わせてそんな事を呟きながら頷き合った。

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