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第八話(鈴視点)
Side 鈴
そんな俺達の様子を見ながら何でもないような調子で
「2人ともモテそうだけどねー」
だなんてあおちゃんが言ってくる。
「めーちゃんは告白されてもゲームする時間なくなるからって断ってたよね」
「やって、デートとかしてたら確実にイベント走れんくなるやん。それで機嫌損ねるんも嫌やし、俺もストレス溜まるわ」
「あはは、咲良くんらしいね」
めーちゃんの言葉に笑ったあおちゃんにうんうん頷いていれば
「でもそう言うりんちゃんは1年の時彼女おったんやろ?」
だなんて思ってもみなかった言葉がめーちゃんの口から飛び出て思わず勢いよく立ち上がってしまう。
「ちょっ、とまって!何でめーちゃんがその事知ってんの!?」
「須賀やんに聞いた。確か1年の頃同じクラスやったよな?何や同じ委員の女の子と付き合っとったー的な話聞いたぞ」
「須賀くんか~。いやいや、でも付き合ってた言うても半年くらいやし、手を繋ぐ程度の健全なお付き合いやから!あおちゃんと違って俺は大人の階段まだ昇ってないかんね!?」
「お、これは僕が不健全だったと遠回しに言われてるのかな、普通に考えたら高校生なんだし僕の方が健全だった気もするんだけど」
「いや、ちがくて、えぇ!?」
「ぷっ、ははは、何そんなガチになっとんよ、りんちゃんもちつけ」
「ごめんごめん、ちょっと悪ノリしすぎたね」
「も、も~めーちゃんもあおちゃんも酷いよ~。2人してからかってきて」
そう、恨めしく思いながら文句を言えば再び謝ってきたあおちゃんが時計の方を見て「あ」と、声を上げた。
「そろそろ次の講義始まる時間だね、僕もう行くね、2人ともまたね」
そう言ってお盆を持って席を立ったあおちゃんを見送って俺達も席を立つ。
「ほなら俺らも行こか、りんちゃん」
「うん」
「怒ってる?」
「え、べ、別に怒ってないよ」
「ほんまに~?」
嘘、怒ってる。
でもそれはめーちゃんに対してやなくて余計なことを言った須賀くんに対してで、ただそれをここで言ってしまったら何でかって理由を確実に聞かれるだろうし、それに対して上手く答えられる自信がない。
「ごめんな、りんちゃん」
「へ」
「あんまり触れて欲しくない話題やったかなって、さっきの彼女の話。でも俺、須賀くんから話聞いたとき悔しかったんや、そりゃ高校1年の時は知りあってすらおらんかってんから彼女がいたなんて知るはずもなかってんけど、それでもりんちゃんの事で知らん事あって、それを第3者から聞くってのが嫌で、でもそれがほんまの事なんか確かめるんもちょっとどうかと思ってずっと聞けず仕舞いで、藤堂の話に便乗する形で聞いてしもた。だから嫌な想いさせてしまったんなら謝る。ごめんな」
めーちゃんのその言葉に思わず足が止まってしまう。
きっとめーちゃんにとっては仲の良い友達に対するちょっとした独占欲なんやろうけれど、それでもその気持ちが友情関係の延長線上にあるものなんやとしても、ちょっとでも嫉妬をしてくれて、独占欲みたいなものを抱いてくれたそんな事実にバカみたいに舞い上がってしまう。
あぁ、俺ほんまめーちゃんの事好きなんやなぁ。
「りんちゃん?」
「へへ」
「え、何で急に笑い出したん、ちょっと怖いぞ」
「え~酷いなぁめーちゃん。まぁいいやほら、俺達も早く教室行こ」
「お、おう、今度は急に機嫌良くなったな」
「やから別に怒ってない言うてるや~ん」
そう言ってめーちゃんの腕を掴む。
そんな俺の事を振り払うことなく好きにさせてくれるめーちゃんに益々俺の機嫌は上がる。
少なくともめーちゃんも俺の事大切や思ってくれてんねんもんな、焦らず慌てず確実に押せ押せで行くで~。
そんな俺の決意を知らないめーちゃんが「まぁ、怒ったり、悲しんだりするよりそうやって楽しそうにりんちゃんがしてくれてる方が何倍も良いわ」なんて言うので、俺の心臓の方がドギマギさせられるのです。
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