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十二話(芽季視点)

 Side 芽季 「で、結局めーちゃんとアレクさんってどういう関係なん?」  新歓が終わり、りんちゃんと一緒に自宅に帰れば、部屋に入るなり、りんちゃんがそんなことを聞いてくるから思わずぽかんとする。 「どんなも何も、さっきも言うたけどオンラインゲームで知り合ったゲーム仲間やって」 「でもでもやけになんか親しくなかった?」 「あーまぁ会ったのはこないだのオフ会が初めてやったけど、付き合い自体は長いからな。それにアレクさんって父親が外国の人らしくて仲の良い人にはスキンシップが激しいんや」 「ふーん」 「え、何その反応」 「別に~」 「アレクさんと会った時の話聞く?」 「聞く!」 「うぉ、想像していたより良い食いつきっぷり」 □■□ ~回想(入学式前)~  これは俺が東京に来て初めてのオフ会に参加することになった時の話。  中学生になった頃、入学祝いということで父親からノートパソコンを買ってもらった。  小学生の頃からゲームが好きで、ゲームばかりしていた俺は最初、あまりパソコンについて興味を持つことはせんかったけども、ある日パソコンでやるオンラインゲームというもんの存在を知った。  それは世間的にも結構な人気を集めているゲームやったみたいで、興味本位で調べてみればすぐにヒットした。  それがゲームであるならばやってみるしかない、ゲーマーの血が騒ぐままに父親に許可を得てインストールし、いくつかの約束事を決めて俺はそのオンラインゲームを始めた。  だがしかし、普段やっていたゲームソフトとは異なるパソコンでのオンラインゲームは不慣れな俺にとって慣れないことばかりであまり上手くゲームを進めることができなかった。  いや、だってその時まだ中学生やし、まだまだ知らん事ぎょーさんあったし、俺がゲーム下手なわけちゃうからな、いや、ほんまやって!りんちゃんそない笑うなや!!  コホン  とにかくそんな風にオンラインゲームに四苦八苦していた時に俺に対して話しかけてくれた人がいたんよ。  え?その人がアレクさんかって?  ちゃうちゃう、この人は別の人。  ほら、前1回話したことあるやろ、めちゃくちゃお世話になったゲーマーさんがおるって、恐らく社会人で……そうそう、ブラック企業に勤めてるかもしれん社畜のフォロワーさん。  その人、ハリーさん、言うんやけどな、どうやらハリーさんは初心者に対して色々教えてくれるめちゃくちゃ親切なプレイヤーやったわけよ。  ほんでまぁハリーさんの手ほどきのおかげで大分ゲームの腕も上達した頃にハリーさんからギルドに誘われたんよね。  誘われるままにギルドに入ってハリーさん以外にも知り合いが増えて、結構楽しいゲームライフを送ってたんよ。  それから高校生になりたての頃やから3年くらいたった頃かな、俺らのギルドにアレクさんがやってきてん。  どうやらハリーさんとアレクさんの父親が仕事で知り合ったらしくてな、そんで暇を持て余してたアレクさんの事このゲームに誘ったみたいやねん。  ただ、その頃から段々、ハリーさんがリアルが忙しくなってきたみたいでイン率下がっとったんよな、やから歳の近い俺に、良ければ一緒に遊んであげて~って頼まれたんや。  ハリーさんにはほんま沢山世話なったからな、断る理由もないし、そんなこんなでアレクさんと一緒にゲームやるようになったんやけど、同じ学生さんやったからログイン時間とかも他のメンバーと比べると一緒なことが多くて大分早く打ち解けたっちゅーわけ。  ほんで今年、俺が東京出てくる言うたら、東京に住んどる言うからじゃあ念願のオフ会しよーって話なって、オフ会に行ったんや。 ■□■ 「わー本物のさっくんだー。はじめましテ!アレクさんだよぉ☆」 「アレクさんってマジの外人さんやったん!?」  指定された店で席に座って待っていれば前方からやって来た人物に声をかけられ、その人物の姿に思わず叫んでしまった。  ぎ、銀髪……!  めちゃくちゃ整った顔してるし、モデルさん言われても信じてまうくらい美形やん。  そんな風に驚いている俺に対して「なはは」と笑った後、アレクさんは言葉を続ける。 「いや~~~?普通に日本生まれの日本育ちな日本人だよ!パパはロシア人だけどネ」 「は~ハーフなんか!」 「そゆこと」  そう言ってウィンクをするアレクさんにおぉう、と思わず圧倒されていれば「実はね、」とアレクさんが口を開く。 「ハリーさんも誘ってみたんだけど、やっぱり仕事が忙しいみたいで、すごく残念そうにしてたよ、さっくんによろしくって」 「仕事ならしゃーないもんな。なぁアレクさん、」 「ん?」 「ぶっちゃけハリーさんの会社ってブラックなん?」  声を潜めて前々から疑問に思っていたことを思い切って訊ねた俺のその言葉にアレクさんは一瞬きょとんとした顔をした後、突然大声で笑いだした。 「いや、ははは、まぁ確かに見ようによってはブラックっちゃブラックかもしれないけれど、あははは、ははは」  何がそんなに面白かったのか笑いが収まる気配のないアレクさんに戸惑ってしまう。 「ひー、うん、いや、さっくん面白いね」 「意味が分からない」 「ハリーさんとこはねー、一応真っ当な会社だヨ、ただすこーし特殊なお仕事ってだけでこれ以上は個人情報になっちゃうからネ、またハリーさんと会った時に直接聞いてみてよ。まぁ直接会ったらどんな仕事しているか一発でわかると思うけれど」  なんて事があったのだった。 □■□ 「と、まあこれが俺とアレクさんの出会いやねーその後は色々アレクさんにお店連れてってもろて、最終的にはゲーセンで白熱した戦いを繰り広げたんや」  そう、話し終えた俺に対し、静かに聞いていたりんちゃんがポツリと 「なんか、世間って意外と狭いんだね」  なんて言うもんやから思わず深く頷いてしまう。 「俺もそう思った」 「まぁでも、大学でも知り合いがいて良かったね」 「ほんまにね~」 ◇◆◇ 「ぇーちゃん、めーちゃん!」 「うぉっ、なんやりんちゃんそないな大声出して」 「いや、めーちゃんが急に遠い目するから」  そう言って立ち止まったりんちゃんと同じように俺も立ち止まる。 どうやら過去を思い出していたらぼーっとしすぎたようでりんちゃんに心配をかけてしまったらしい。  それをほんの少し申し訳ないと思ったけれど、当時のことを鮮明に思い出して思わず笑いが零れてしまう。 「あぁ去年、初めてアレクさんに会った後にりんちゃんに問い詰められたこと思い出してた」 「と、問い詰めてないし!」 「いやぁ~なんか浮気現場見つけられた彼氏の気分やったわ~」 「な、ななな」 「はは、冗談やって冗談」  真っ赤な顔をして言葉に詰まるりんちゃんにそう、言葉を放れば 「も、も~!めーちゃんのバカ!ほら、馬鹿な事言ってないでさっさとアレクさんとこ行くよ」  やなんて言って早足で歩きだすもんやから「ごめんって~」と、言いながらその背中を追いかけた。

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