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十四話(鈴視点)
Side 鈴
「ん~」
「りんちゃん、スマホの画面と睨めっこしてどないしたん?」
食堂で時間を潰しながらうんうんと唸っていれば、間食を買い終えて席に戻ってきためーちゃんに声をかけられる。声のした方へ顔をあげると、不思議そうな顔をしためーちゃんと視線が合った。
「そろそろバイトしたいな~って思ってるんやけど中々これだ!ってのが見つからなくてさ~」
「あぁ、そいや大学生なったらバイトするんやーって言うとったな」
「うん!ただ、去年は上京してきたばっかでドタバタしとったし、ゆっくり探す時間もなかったから後回しにしとったんやけどそろそろ落ち着いてきたしどこか良いバイト先ないかな~って思って!」
そう、めーちゃんに言葉を放りつつ再び画面に視線をやり、浮かんだバイト情報をどんどんスクロールしていくけれど量は多いのに中々これだ!と思うものが見つからない。
そんな俺の様子を特に気にするでもなく隣に座っためーちゃんが画面を覗き込みながら話しかけてくる。
「りんちゃんはどんなバイトしたいとかあるんか?」
「っ、やっぱ接客業がやりたいかな〜事務作業とか工場での作業は向いとらんもん」
特にめーちゃんは意識していないのだろうけれど、高校生の頃からめーちゃんは物理的距離が近い時がある。
その度に俺の心臓は駆け足になって、頬に熱が集まりそうになる。
今だって突然の至近距離に思わず言葉が詰まってしまった。
けれどそんな俺の気持ちなんて知る由もないめーちゃんは普通に会話を続ける。
「あーせやね、接客業のがりんちゃんっぽいわ。同じ作業淡々と黙ってやり続けるの苦手やもんな、りんちゃん」
「逆にめーちゃんは接客業向いてなさそうよね」
「絶対やらん、というかバイトなんかしたらゲームする時間減るし、どうせ後3年もせんうちに社会人なって嫌でも働かなあかんくなるんやから今から働くとか嫌すぎる、それならゲームしてたい」
そう、真顔で言い切っためーちゃんに思わず苦笑が漏れる。
一緒にバイトできたら楽しそうやな〜ってほんの少し思ってたけどまぁめーちゃんの性格からしてそれは難しいもんね。
「めーちゃんらしいや」
「まぁでもりんちゃんがバイト始めたら一緒におれる時間減ってしまうん、少し寂しいわ」
「へ?!」
「やって俺ら何だかんだ高校の頃から一緒におるやん、大学の講義もほぼ同じやし、放課後も部屋隣同士やから一緒に帰るしお互いの家行き来してるし」
「そ、そだね」
他意は無いんだろうけど、めーちゃんからのこう言う発言は本当に心臓に悪い!
めーちゃんの事やから他意は無いんだろうけれど!
「ま、りんちゃんがバイト始めたらバイト先遊びに行って常連なるわ」
「本当かなー?めーちゃん、ゲームに忙しくて来てくれなさそう」
「大丈夫、持ち運び式のゲーム持ってくから」
「そこなの?」
キリッだなんて顔をして言っためーちゃんの言葉に思わず吹き出せばめーちゃんも笑いだして、そうやって2人で笑い合う。
あぁ、幸せだなぁ。
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