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第15話
俺は翌日から熱を出して寝込んでいた。
アキラが付きっきりで看病してくれていたが、俺は宏が心配だった。
「アキラ…宏は?」
熱で朦朧としながら聞くと、アキラは悲しそうに笑うだけだった。
3日間寝込んで、やっと熱が下がった日の事だった。
バタバタと家の中が騒がしいと思っていたら、アキラが真っ青な顔で部屋に飛び込んで来た。
「光輝、落ち着いて話を聞いてくれ」
肩を掴まれ、アキラの様子が尋常では無い出来事が起きた事を告げていた。
俺が息を呑むと
「宏が…事故に巻き込まれて…死んだ…」
そう告げたのだ。
「え……」
一瞬、アキラの言葉の意味が分からなかった。
「何を言って…」
思わず空笑いを浮かべた俺に、アキラは俺の肩を抱いてテレビのある居間へ運んだ。
「光輝!動いて大丈夫なのか?」
テレビを見ていた葉月達が走り寄って来た。
そして俺の目に、テレビに映し出された名前が目に入った。
『死亡 赤司宏さん(18歳)』
と書かれていた。
俺の目の前が真っ暗になる。
ニュースからの情報では、宏が泊まっていたホテルで火事があり、逃げ遅れた宏が焼死体で発見されたという事だった。
その時、俺の脳裏には赤司様の顔が浮かんだ。
…まさか。
その時、逸人の口元が一瞬、笑みを浮かべていたのを見た。
グラリと地面が揺れた気がして、俺はそのまま意識を失った。
目を覚ますと、アキラが心配そうに顔を覗き込んでいた。
「これから…遺体を引き取りに行くんだけど、お前は此処で待ってろ」
そう言われて、俺は首を横に振る。
「行くよ…。ちゃんと、宏と最後のお別れをしたいから」
俺はフラつく身体を振り起こし、着替えをしてアキラと一緒に警察へと向かう。
遺体の損傷が酷く、姿を確認する事は出来ないらしい。
すでに布で包まれて袋に入れられた状態で、棺桶に入れられていた。
「宏…、ごめん。俺のせいだ…」
棺桶に触れるて呟くと、雪雅がゆっくりと近付いて来た。
手にはあの日、宏が俺に手渡したUSBを持っていた。
あの日、こっそり宏が手渡すと言う事は、とんでもなく大事なデータが入っているような気がして、俺は宏が部屋を出て行った後、雪雅にこのUSBを預けたのだ。
「光輝、良く来たな。お前とちゃんと話出来るのが此処しか無いから、助かったよ」
雪雅はそう言うと
「多分、宏が殺されたのはこのデータを写したのが原因だな」
と呟いた。
「殺された?」
分かってはいたけど、はっきり聞かされるとショックが大きかった。
「宏、ベッドに縛られた状態で発見されたらしい」
雪雅の言葉に目眩がした。
「このUSBの中身、やばいデータだったんだよ。お前の親父の借金、でっち上げだったんだ。借金を抱えてたって言ってた子会社の社長と共謀して、お前を手に入れる為にでっち上げた借金だった。その他にも、やばいデータが入ってた。多分、宏は命懸けでこのデータを集めてたんだろうな」
そう言って胸ポケットに入れた。
「宏のヤツ、ダミーまで作ってやがった。これと全く同じUSBデータが踏み付けられて壊された状態で発見されてる」
そこまで話すと、雪雅が俺に頭を下げた。
「な…に…?」
「すまない!宏を守りきれなかった」
「なんの話だよ」
俺が戸惑っていると、アキラがスーツ姿のエリートぽいヤツと話しながら入って来た。
「俺達は…、俺と雪雅。そして宏はあの屋敷をぶっ潰す計画を立ててたんだ」
アキラはそう言って、隣の男に目配せすると
「初めまして。警視庁の特別捜査課の小倉と申します」
と言って俺に手を差し出した。
俺が疑問に思いながら手を握り返すと、その人は優しい笑顔を浮かべて
「聞いていた通りの方ですね」
って呟いた。
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