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第17話

俺達は、時間を掛けてゆっくりと……そう、真綿で首を絞めるように追い詰めて行く計画を立てた。 俺から家族、そして最愛の人を奪った事を、心の底から後悔させてやる。 俺はあの日、宏の棺の前で心を捨てた。 愛する事も、誰かの手を求める事も…全部だ。 赤司に身も心も明け渡したように従順に振る舞い、逸人にも優しく甘く…。 そう、まるで恋人のように振舞った。 警戒心の強い赤司はまだ俺を疑っているらしく、時々酷い抱き方をしたりもするが、まぁ…こいつは簡単には楽にしてやるつもりは無い。精々、今を楽しんでおくんだな。 逸人は元々、俺を独り占めしたくて宏に逆恨みしていた感じがあったので、落とすの簡単だった。 宏を失い憔悴しきった姿を演じ、慰める名目で近付いて来た逸人を抱いた。 俺無しではいられなくなるように、甘く優しく愛を囁き、快楽を与える。 元々、独占欲が強かった逸人は、どんどん俺にのめり込み、独占欲を拗らせて行く。 「こんな俺…嫌いになる?」 男を誘う手管を持っているのは、向こうも同じ。涙を浮かべて、縋るように甘える。 俺は優しく抱き締めて、涙を浮かべる瞼にキスをすると 「どんな逸人も可愛いよ」 そう言って頭を優しく撫でてやる。 「ねえ…光輝。愛してる?」 小首を傾げて俺に聞いてくる。 虫も殺せないような可愛い顔の下に、悪魔の本性を持つ逸人に微笑み、唇だけ『愛してる』と動かす。 この屋敷は、宏の一件以来監視の目が厳しくなった。 俺とアキラの部屋以外、全ての部屋に監視カメラと盗聴器が仕掛けられている。 だから、この会話も全て赤司に筒抜けな訳だ。 何も知らない逸人は 「そんなのじゃ、嫌だ!ちゃんと声に出して言って」 俺の首に手を回し、そう言ってキスを強請る。 俺は困った顔を作り 「逸人…。俺は身も心も、赤司様に捧げたんだ。そんな言葉を、赤司様以外に声に出して言えないよ」 と答える。 「お願い、嘘でも良いから…」 縋り付いて言われ、俺は頬に流れる涙にキスを落としながら、耳朶へとキスをしてそっと耳元で 「逸人だけだよ…愛してる」 と、小さく甘く囁く。 勿論、監視カメラには耳朶にキスをしているようにしか見えない位置で。 すると逸人は身体を震わせてしがみつき 「お願い……抱いて……。夜まで我慢出来ない」 そう言って、俺を押し倒し馬乗りになる。 「ダメだよ…逸人。赤司様が居ない場所で、こんな……」 言葉ではそう言って、誘うように眼差しを向けてやる。 (堕ちろ……。もっと、俺の腕に堕ちて来い。そうしたら、幾らでも喘がせてやる。そう、俺から離れられなくなる程にな…) 俺のシャツをたくし上げ、逸人が求めるように唇を這わす。 せわしなくベルトが外されて、唇が逸人を貫く俺自身へと降りてくる。 「逸人、ダメだって。赤司様に怒られるよ」 顔を外すように見せかけて、指先で逸人の頬をゆっくりと撫でる。 俺は自分で自分の身体をコントロール出来るようにはなっていた。 正直、あの赤司に抱かれるくらいなら、逸人を抱くのは可愛いもんだ。 感じる場所、好きな体位、どうされるのが好きなのか…。 俺は完全に熟知していた。 何度も何度も求められ、満足して逸人が俺を離したのは3時間後。 着衣を直して部屋へ戻り、ベッドへ突っ伏す。 するとアキラが俺の頭にペットボトルを置いた。 「無理し過ぎじゃないか?お前、最近、毎日、昼、夜じゃないのか?」 心配そうに言われて、俺はペットボトルの蓋を開けると冷たい水を口へと流し込む。

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