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運がよかった。というべきか私は14になる今までなんとか生きてこれた。捨てられたあの時同じ境遇の仲間に出会い生きる術を教わった。 盗みもした。色んな大人に頭も下げた。当時たくさんいた仲間はもう私と他に一人しか残っていない。 「セツ。もっと街に出ないか」 「うん」 王都に行こう。とジェイドが言った。私を救ってくれた仲間だ。私はこの先もずっとジェイドと共に行く。 「セツは顔が綺麗だから隠さないとな」 「ジェイドだってかっこいいんだから」 いつの頃からかジェイドが私に人前にはローブなしで出るなと言い募る様になった。 鏡なんて代物は持っていないがたまにショーウインドウに映る自分の姿は見たことがある。あの親の面影をしっかり受け継いでるわけだ。 奴隷制度がある世界だ。自分で言うのもなんだが危ないだろう。だが、顔がいいとそれなりの恩恵を受けれるのもまた事実。生き抜く為にいくらでも利用してやるという自分の気持ちとは裏腹にジェイドの屈強な意志により利用するどころか今はジェイドに養ってもらってる状態になってしまった。 前世から男性にしか興味のなかった私にとって今世は最高じゃないかと思ったこともなくはなかったが、タチとネコが決められた状態。ネコ同士というものは子を成すことも出来ず、なおかつその行為まで出来無いという現状だ。キスだけが唯一繋がる手段。 返す物を何ももっていない私がジェイドに返せるのはキス一つ。ジェイドは恋愛感情として私を慕ってくれてる。そう気付いてからの最大の礼がキスだけ。それがとても悲しく感じる。私の命の恩人であるジェイドが望むなら体なんていくらでも差し出すのに。 私がジェイドを慕っているかと聞かれればよく分からない。どうしてもユウリの存在が頭をかすめるからだ。 多分ジェイドは私が同じ気持ちでないことに気付いているだろう。それでも何も言わない。どちらにしろ二人の間の気持ちはネコである限り不毛なのだから。 ただ、私はジェイドがタチではないかと思っている。男らしい体躯に顔立ち。タチ特有の証である。そうなればジェイドは一気に私とは遠い存在になってしまう。だから検査を受ける事をどちらも口に出すことはなかった。

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