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第4話
カチャッと小さな音を立てて隣室の扉が開かれ、シェリダン付きの女官たちが皆入室してくる。ミーシャがアルフレッドの紋が刺繍されているベールをシェリダンの頭にかけ、クレアやアンナが衣装の僅かな乱れを細かく直していった。
「ではアンナ、レイルをお願いしますね。レイル、良い子でアンナと待っていてくださいね。帰ってきたら、お散歩に行きましょう」
お任せくださいと微笑むアンナに、散歩と聞いて尻尾をブンブンと振っているレイルを預けシェリダンは踵を返した。エレーヌがシェリダンの靴を用意し、ミーシャとクレアが扉を開く。扉の前で警護をしていたシェリダン付きの近衛であるリーン大将とナグム少将がシェリダンに礼をした。
前にはリーン大将が立ち、横にはシェリダンの手を恭しくとり導くエレーヌ、そして後ろにはミーシャとクレア、ナグム少将がいる。大国の王妃としてはこれでも少ない方であるが、シェリダンはいつまでたってもこのゾロゾロと連れ歩く状態に慣れない。顔を上げゆっくりと歩くシェリダンの姿は堂々としたものであるが、内心では取り留めのないことをグルグルと考えて落ち着きは全くなかった。
宰相補佐時代でも表に出ることは同僚のリオンに任せ自身は裏仕事を請け負い常に端で存在を消していたシェリダンであるが、王妃となった今それは許されない。商人たちがシェリダンの姿を直視しないよう深々と頭を垂れ、側妃たちやアルフレッドの兄であるルイス大公の第一夫人アリアと第二夫人のイザベラも立ち上がって流れるように礼をする中、シェリダンはエレーヌに促され、中央の一段上がった場所に置かれているゆったりとした豪奢な椅子に腰かけた。高貴な身分であることを表すためであろうが、シェリダンにとっては居心地悪いことこの上ない。
シェリダンの左右にエレーヌとミーシャがつき、後ろにリーン大将らが立つ。シェリダンが促してようやく側妃たちがそれぞれ椅子に座り商人たちも顔を上げた。
「どうぞ近くへ」
シェリダンが促してようやく、商人たちは各々商品を手に前へ身を滑らせた。最初は少々緊張していた商人たちもすぐにいつもの調子を取り戻し、相手が望むものを会話の中で探りながらこちらはどうか、いやこちらの方がいい、と次々に美しく煌びやかな品を前に並べていった。
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