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第5話

 やはりシェリダンの前に多くの商人が集まり次々と品物を勧めていくのは仕方のないことか。しかし事前にエレーヌが手を回したことで美しい宝石の散らばった装飾品の中に芸術品のようなティーカップやプレート、幼い王子や王女が好みそうなオモチャや衣装、そしてレイルのオモチャが所狭しと並べられていた。 「こちらなどはいかがでございましょうか。カップやティースプーンなどすべてで一つの絵を表すような構造になっておりまして――」 「こちらは宝石箱になっておりますが、陛下よりの賜りものを納めるのに大変よろしいかと」  次々と勧められる品物にどうしたらよいかわからず頷くにとどめていたシェリダンであったが、チラと視線を向け第一王子の母であるラーナ側妃と第二王子の母であるミュシカ側妃がそれなりに買い物を済ませていることを確認し、側にいるミーシャに二人を連れて来てくれるよう頼んだ。 「妃殿下」  ミーシャと共にすぐにシェリダンの元へ来たラーナとミュシカが揃って礼をする。シェリダンは目の前に広げられた品を見るように促した。 「王子や王女に何か、と思ったのですが、どうにもよくわからないので、教えていただけますか?」  シェリダンは家族にいない存在かのように扱われ邪険にされながら育ったため、子供が欲しがる物や喜ぶ物が何であるのかわからない。それがわかっているラーナやミュシカは何を言うことも無く微笑み頷いてシェリダンの側に寄った。 「凝ったものはとても可愛いのですが刺繍などの分重くなってしまいますから、王女にはこちらの染が美しいお衣装などいかがですか?」  確かに可愛い物は子供も好きであろうが、あまり重いと小さな身体には辛いだろう。ラーナが指さしたのは刺繍の類は少ないがとても色合いが可愛らしい衣装で、その気遣いにシェリダンは素直に感謝し、その衣装を手に取った。先ほどまでにこやかに話しを聞きながらもどこか乗り気ではなかったシェリダンのその行動にいち早く商人たちが動く。次々に機能性を重視しつつ見た目も良い衣装や小物を並べ始めた商人たちの勢いに、ラーナとミュシカはほんの僅か目を見開き、そして胸の内で苦笑した。これではシェリダンが困惑して二人に助けを求めるのも当然だろう。

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