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第6話

 あれこれと勧める商人たちの勢いから守るように、やんわりと遮りながらラーナやミュシカが子供が喜びそうなものを選びシェリダンに見せる。シェリダンはその中から王子や王女が好みそうなものを買い取った。レイルのオモチャも選び、アルフレッドにと幾つか男性用の装飾品も選ぶ。  そろそろシェリダン自身のものを、とラーナたちがそれとなく勧めようとした時、ダンッと扉の向こうで長槍が打ち鳴らされる。 「陛下のおなりッッ!」  アルフレッドは執務があるため後から個人で商人と会うと聞いていたため、慌てて皆が立ち上がる。商人たちも広げていた品物を端に避けて道を作り平伏した。近衛の手によって扉が開かれる。リュシアン隊長を従えて入ってきたアルフレッドの姿に、シェリダンは立ち上がって彼の元へと足を進めた。 「シェリダン」  近づいてきたシェリダンに笑みを浮かべて優しく抱きしめ、触れるだけの口づけをする。シェリダンは顔を真っ赤にしているが腕の中から逃れようとはしない。 「ご政務はもうよろしいのですか?」  大国を一度に罠にかけ手に入れようと画策し、オルシアも危険に晒した架醍の国への処遇や他国への対応でアルフレッドは忙しくしていたはず。もしや無理をして来たのではとシェリダンが心配げに眉根を寄せた。そんなシェリダンの腰を抱き寄せて、眉間に指を当ててグリグリと解す。驚いて目を見開くシェリダンに、アルフレッドはクスリと笑った。 「ようやくひと段落したからな。これで次の段階に進むまでは少しゆっくりできるだろう」  僅かだが、いつもの日常が戻ってくる。そう言ったアルフレッドにあまり表情の変わらないシェリダンの顔がパァッと明るくなった。その途端にグイッとアルフレッドの胸元に顔を押し付けられる。困惑するシェリダンの耳に、実に深々としたため息が聞こえた。 「あ、アル……?」 「まったく、無自覚というものは恐ろしい」  こんなに可愛らしい顔を他人に見せてたまるかと、アルフレッドはシェリダンのベールを引っ張って目深に被らせた。 「アル?」  いったいどうしたというのだろう、とアルフレッドの胸の内などまったくわからないシェリダンに苦笑して、アルフレッドはシェリダンの腰を抱きながら促し、先ほどまでシェリダンが座っていた椅子に並んで座った。側妃たちも椅子に座り、商人たちも顔を上げる。

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