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第10話

 アルフレッドはこれからまた執務室に戻って夕食までは執務の予定だが、少しは余裕があるのかシェリダンの腰を抱きながら一緒に王妃の私室へと向かう。私室の扉を開いた瞬間に駆け寄ってきたレイルの頭を撫でて、アルフレッドはシェリダンの額に触れるだけの口づけを落とした。 「これからレイルを連れて庭に行くのだろう? ベールをしっかり被って、身体を冷やすな」  まるで親のように言うアルフレッドに小さく笑みを零して、シェリダンは頷いた。 「アルも、どうぞご無理なさいませんように」  互いに抱きしめ、触れるだけの口づけをして、そして執務室に戻るアルフレッドをシェリダンは見送った。尻尾を振ってグルグルとシェリダンの足元にじゃれつくレイルを抱き上げる。 「ちゃんと覚えていますよ、レイル。さぁ、行きましょうか」  撫でてやれば千切れてしまうのではないかと心配してしまうほどにブンブンと勢いよく尻尾を振ってレイルは喜びを表した。エレーヌはアンナとクレアに商人から買ったものを仕舞うように言い、ミーシャと共にシェリダンの後ろに控えた。  王や王妃の私室は城の最奥にある。レイルを抱いたシェリダンがエレーヌたちと共に中庭に向かう道中ではすれ違う女官や近衛、執務官や下女下男皆がシェリダンに道を譲り頭を垂れる。毎日繰り返されるその光景に未だ慣れず無意識のうちに肩に力が入った。中庭についてレイルを地に降ろしてやりアルフレッドが用意した屋根付きのソファーに座った瞬間、深々とため息をつく。 「お疲れでいらっしゃいますか?」  エレーヌが膝を折り気遣わしげにシェリダンを見た。シェリダンは苦笑しながらも首を横に振る。 「いえ……、どうにも慣れないだけです」  敬われることも、傅かれることも。本当はこの芸術のように美しいソファーに座ることも絹や宝石に囲まれることもシェリダンには恐れ多いことなのだ。この城での生活は優しく穏やかで温もりに溢れているが、どうにもシェリダンには周りを囲むひとつひとつが豪華すぎる。

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