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第3話
「……優志、じゃあ、このままセックスしようか……」
「……え……?」
「じゃあ……そうだな……優志、まず、脱ごうか……」
「え?樹さん、だって……」
「ん?……あぁ、もう脱いでた?」
「……脱いでない……」
「じゃあ、脱いで……オレも脱ぐから」
「……」
呆然としていると、電話の向こうから衣擦れの音が聞こえてきた。樹が脱いでいるのだ。本当に脱いでいるのだと思ったら羞恥よりも優志の中で期待が膨らんできてしまった。
会いたくて、抱きしめてほしくて……樹とセックスしたかったのだ。
優志はスマホをシーツの上に置くと、中途半端だったハーフパンツと下着を足から外し、ティーシャツも脱いで床に放った。
「……樹さん……」
「脱げたか?」
「うん……」
シーツの上、何も着ないで一人でいるのは変な感じだ。
「……あぁ、キスしたいな……キスは帰ったらするとして……お前の体触りたい……」
「うん……」
「乳首、触りたいな……」
「うん……」
優志は自分の乳首に指を伸ばした。いつも樹が触ってくれるみたいに、指の腹で押しつぶしてみる。
「……ん……」
「優志」
「……ん……?」
「声、もっと出せよ……もっと聞かせて、優志の声」
「ん、あ……樹さん……」
ツンと尖ったそれを摘むように引っ張る。甘い疼きが腹の底から湧いてきて、優志は夢中で乳首を弄り声を上げた。
「あ、あぁぁ……んん、樹さん……」
「気持ちいい?」
「ん、いぃ……」
ベッドへ横たわり、スマホはスピーカーボタンを押してシーツの上に置いた。これで両手が使えるようになった。
「優志……聞かせて、ちゃんと、どこがいいのか」
「はぁ……ちくび、きもち、いい……んん……うぁ……こっちも……はぁ……あ……い、いい……気持ち、い……」
もう片方の乳首へも指を絡め、同じように愛撫していく。だけど、刺激を求めるのは乳首だけではなく、優志の腰は怪しく揺れた。
さっきから放置されていた分身は刺激を求めるように上を向き、蜜を垂らしていた。
「樹さん……もっと、触ってぇ……」
「あぁ……どこを触って欲しい……?」
「ふぁ……あ、も……乳首じゃなくて……はぁ……触って……」
優志は自分の指を通して、樹が触ってくれているような錯覚に陥った。だから何度も触ってほしいと、樹に強請った。
「優志、どこを?」
「あぁ……さ、触って……ちんこ……触ってよぉ……」
「いいよ……もう涎垂れてんだろ?」
「ん、垂れてる……ぬるぬるしてる……ぁあ……!」
待ち焦がれた刺激を与えられ、優志の熱が一層高まる。解放へ向けて優志は握り締めた熱を無心に擦り続けた。
「優志、気持ちいいか?」
「い、いい……あぁ……気持ちい……ふぁ、先っぽきもち、いぃ……」
「優志、そこぐりぐりされるの好きだろ」
「ん、好き……ぁああ……!も、だめぇ……出ちゃう……」
「……早いな……一昨日いっぱいしただろ?」
「したけど……したけど、樹さん……いれて、くれなかったからぁ……お、オレ……欲しかった……はぁ……ぁんん……樹さん、ほし……」
「オレが……?」
「うん……樹さんも……おなに……してる……?」
「あぁ……」
「…おっきくなってる…?」
「なってるよ」
「……いれたい?オレん中……突っ込みたい?」
「……あぁ……突っ込みたい、突っ込んでぐっちゃぐちゃに掻き混ぜて一番奥に種付けしたい……」
「んぁぁあ……やぁ……そんな事、言わないで…オレ……はぁ……も、いっちゃう……!」
限界が近いと思った。膨らんだ優志のペニスは解放を求め、熱を噴出そうとしている。
「優志、いけよ」
「ぁあああ……!!!」
慌ててティッシュを掴み、覆うと直ぐに欲望を吐き出した。荒い息を吐き出しながら、全てを吐き出すように数回擦り上げる。
「……はぁ……はぁ……」
「……気持ちよかった?」
「……ん……よかった……はぁ……」
ティッシュを始末すると、体の力を抜いてだらりと横になった。まだ息は整わないが心地よい倦怠感が優志の体を支配している。
はぁっと深く息を吐き出したところで、優志ははたっと気付いた。
「樹さん……ごめんなさい……」
「ん?」
「……だって……セックスしようって言ったのに、オレだけ……気持ちよくなってる……」
「そんな事ないよ」
「……だって、樹さんまだいってないでしょ?」
「……優志、眠い?」
「ううん、大丈夫……」
「じゃあ、もう少し付き合ってくれ」
「……うん……」
少しだけ眠くなっていたけれど、樹がいってくれるまでは付き合いたかった。それに、優志自身もまだ足りないと思っていたのだ。
「……優志、オレが欲しい?」
「うん……ほしい……」
「……じゃあ、慣らさないとな……」
「……ん……」
「まずは……準備だな、ローションのある場所わかるか?」
「うん、ちょっと……待ってね……」
言うなりベッドの下を覗き込み目的の箱を引っ張り出す。その中にはローションとコンドームが入っているのだ。
半分程に減っているローションのボトルを掴み、再び箱をベッドの下に押しやる。
「……ローション用意したよ……」
「優志、自分で出来るな?」
「……ん……」
今まで自分で弄った事がない訳ではなかった。まだ付き合う前までは樹を想いながら後孔を弄りながらオナニーした事も何度かある。
考えた末!優志は四つん這いになった。どういう体勢でしようかと迷ったが、樹がしてくれると思うと勝手に体が動いていた。
恥ずかしくなりながらも優志はローションを手の平に垂らすと、それをゆっくりと自分の後孔に擦り付けた。
「いきなり入れたりするなよ」
「うん……」
いつも樹がやってくれるように、入口の周りをマッサージするみたいにくるくると円を描くように指先を動かす。
そこはいつもの刺激を求めてか、ひくひくと物欲しげに蠢いていた。
「……はぁ……」
息を吐き出し余分な力を抜いて、指をゆっくりと中へ埋める。抵抗感はあったけれど、そこは柔かく自らの指を迎え入れた。
「慌てなくていいからな、ゆっくりな」
「うん……」
樹の言葉通り、ゆっくりと指を埋め浅い所を抜き差しする。序々にそこを拡げるように、指を動かす。
「……はぁ……樹さん……指……奥まで入った……」
「柔かくなったら、指、増やしてみな」
「うん……はぁ……」
くちゅくちゅといやらしい音を立てながら後孔を弄る。関節を折り曲げ、優志は中を探った。
いつも樹が擦ってくれる場所……いつも樹が気持ちよくしてくれる場所。
「……はぁ……指……二本……入った……」
「中……攪拌してみて……」
「ん……ぁああ……はぁ……」
くるりと指を旋回させると、肉壁が吊られて引き攣った。
そのまま深く中を探り、優志はある一点を擦り上げた時一際高い声を出した。
「ぁあ!」
「……気持ちいい場所、見つけた……?」
「……はぁ……うん、き、もちいぃ……やぁあ……樹さん……」
「もっと押し付けて……そしたら指、増やして……三本入るだろ?」
「ぁあ、ん……うん……は、入ったぁ……ぁあ……」
「痛くない?」
「……ん……」
引き攣るような痛みはあったが、優志は無視して指を動かし続けた。体を支えていられなくて、片側に体は傾いていたけれど構わずに優志は後孔を責め立てた。
「はぁ……樹さん……ぁあああ……」
ぐちゅぐちゅと音を立てていたそこが静かになる。
ぴたりと指の動きを止めた優志は溢れてきた涙を拭く事も出来ず、ぎゅっと目を瞑った。
「……優志?」
「……ふっ……はぁ……ほし……会いたい……樹さんに……会いたい……抱いて、ほしいよぉ……」
気付いていない訳じゃなかった。いくら慣らした所で樹に抱いて貰える訳がないのだ。
樹は今ここにいない、遠く離れた場所にいるのだ。物理的に無理な距離に。
優志はその虚しさに敗れたみたいに涙を流した。言いたくなかった弱音と一緒に。
「会いたい……寂しいよ……樹さんの顔が見られなくて……寂しい、抱きしめて……キス、して……いっぱい……してほし……ふぇ……」
こんな事を言ったって樹を困らせるだけだと分かっているのに、優志は止める事が出来なかった。
そして溢れる涙を止められるのは樹しかいなかった。
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