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第4話

 夕飯までは時間もあるし、買い物ついでに駅前のショッピングモールへとやってきた。  ケーキの他にも何か樹にプレゼントを贈りたいと思っていたので、一緒に買い物をする事になった。  だが、ショッピングモールに入ってショップを回っている内に併設されている映画館に行こうと樹が言い出した。 「なんか、デートぽくていいな」 「……う、うん」  照れたように笑う優志の手をこっそりと、ほんの一瞬だけ握り締め樹は先に立って映画館へと向かった。  上映映画をあれこれ検討して、二人はアクション系の洋画を観ることにした。気になる邦画もあったけれど、それはまた今度という事で時間までは同じフロア内のカフェでお茶を飲んで過ごした。  映画を見て買い物をして、夜はご飯を作って、手作りケーキで恋人の誕生日を祝う。  初めての事で、だけどずっと憧れていた。  きっと自分はそんな当たり前の事が出来る事はないだろう、そんな風に思っていた。だけど樹はそれを、当たり前の幸せを沢山沢山くれる。  ご飯を食べていて、これが美味しいからと分けてくれたり、疲れた?と聞いて荷物を持ってくれたり、エレベーターのボタンを先に押してくれたり。  ほんの些細な事。きっと樹が今まで彼女にしてきた事、きっと他の誰かに言ったってそんな事が?と言われてしまう程の小さな事だけれど。  だけど、優志にとってはそれが幸せだったし、嬉しかった。  部屋に帰ってきたのは19時を過ぎていた、思ったよりもゆっくりとしてしまったようだ。映画を見た後で買い物しようとモール内をあれこれ見て回ったのだが樹へのプレゼントは結局買えずじまいだった。 直ぐに夕飯の支度に取り掛かることにして優志はキッチンに一人籠もった。  手伝うと言ってくれた樹をリビングへ追い返し、優志は夕飯作りに専念した。  得意料理なんてないし、レパートリーも限られている。だけど最近練習してちょっとだけ美味く出来るようになった料理がある。  オムライスだ。  太一の部屋に遊びに行った時に作って貰ったオムライスがすごく美味しくて、作り方を教えて貰ったのだ。それを自分なりにアレンジして作れるようになった。  樹さんも喜んでくれるといいな、そんな風に思いながら優志は愛情を込めて夕飯作りに励んだ。  オムライスにグリーンサラダ、たまごスープ、そしてデザートはバースデーケーキだ。  キッチンにある二人がけのダイニングテーブルへとそれらを並べていると、樹がキッチンに入ってきた。 「オムライスか」 「うん……」 「すごいな、ありがとう」 「……うん」  卵の上にはケチャップで「HAPPY BIRTHDAY」と書いてある。ハートマークを付けるか迷ったがそんなスペースもなかったので、単語のみだ。  やや半熟の卵の中はチーズを加えたチキンライスが入っている。サラダも市販のドレッシングではなくて、オリーブオイルや調味料で作ったドレッシング。  時間もないからあまり手の込んだものは出来なかったけれど、自分にとっての精一杯とちょっとだけ自負していた。 「あの、お口に合うか分からないけど……」 「美味そうだよ、優志、じゃあ、食べようか」 「うん」 「いただきます」 「いただきます……」  樹のスプーンがオムライスに入り、それが樹の口の中に入るまで優志はドキドキとした気持ちでそれを見守っていた。  もぐもぐと咀嚼を終え、ごくりと飲み込まれると樹の顔に笑顔が広がった。 「美味いよ」 「ホント……?」 「あぁ、優志も冷めないうちに食べろよ」 「うん」  ちょっとだけ自信はあったけれど、やっぱり本人が食べてくれるまでは不安なのだ。だけどお世辞でも美味しいと言ってもらえて嬉しい。  優志も自分の作ったオムライスを食べ、笑顔を浮かべた。美味しいと思ったけれど、それだけじゃない。  自分の作ったものを恋人と食べられるのが嬉しかったからだ。  樹と一緒にいると記念日が増える。今日は樹の誕生日だけれど、自分にとっての記念日でもある。  嬉しいのと、そして感謝だ。生まれて来てくれてありがとうと、心の中で感謝を捧げた。

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