「あ、ん……んん……」 　声が出ないように唇を噛み締める、だけど、直ぐにその努力も消えそうになる。だから手で塞いでみるのだが、それも上手くいかない。 「い、樹さん……」 「ん……？」 　ベッドも二人分の体重など想定外なのか、ギシギシと軋んだ音を立てる。これで声まで隣に聞こえれば何をやっているか、音だけで分かってしまうだろう。 「後から、でもいい……？」 「あぁ……いいけど、後からがいいのか？」 「うん……」 　正面から貫いていた樹の熱塊が抜けていく、ずるりとローションの糸を引きながら抜け出たそれは直ぐにまた元の場所に戻った。 　体を引っくり返され、腰を高く持ち上げられると直ぐに挿入されピストンが始まる。 　声を出さないようにしないと。優志は枕に噛み付いて声が出るのを防いだ、だけどそれは長くは続かなかった。 「……優志」 　またもや優志の中から樹が抜ける。どうしたものかと振り返れば、そのまま仰向けにされた。 「？！」 「……あのな、何も枕に噛み付く事ないだろ……」 「だ、だって、声……出ちゃう……」 「分かった、じゃあ……キス、しながらな」 「え」 「……声がでなければいいんだろ？」 「あ、いつ……」 　最後まで呼べず、樹の唇に塞がれる。 くちゅりと入り込んできた樹の舌が逃げようとした優志の舌を捕まえようと追ってくる。狭い口内の中、追いかけっこは直ぐに優志が負けてしまった。 「……ふぅ……ん」 　漏れるのは音なのか、声なのか。水音と混じり、出るのは熱い息遣いだ。 　優志からの抵抗がないのを確認すると、樹は三度慣れ親しんだ温かい場所へと入り込んだ。 　抽送はゆっくりと、突き立てられるのではなくて、中を掻き回されている感じだ。だけど、円を描くだけではない不規則な動き、それに浅い所から深い所へと緩急を付けながらのピストン運動に優志の体は快楽を溜めていく。 　苦しくなると、樹の唇が離れる。息継ぎが終わると、また直ぐにキス、それを何度繰り返しただろう。 口の周りがべどべとになる位にキスをした。だけどそれもそろそろ終わろうとしていた。 「……ぁ、いつき、さん……」 「……あぁ……」 　ゆっくりだった抽送が大きく、激しいものに変わる。それは数回で、優志の中の深い所で熱い飛沫を放った。 　絞る取るように後孔が痙攣し、優志も樹の手により開放へと導かれた。 　どくどくと注がれた樹の愛液。体内に残して置くわけにはいかないから、全て掻き出さなければならないのは分かってる、だから樹は外で出すと言ってくれたのだ。 　だけど、これは樹が優志で感じてくれた事の証だから。 　中で出されるのが好き、というのは間違ってはいない。樹がくれるもの全てを欲しているからだ。 　恥ずかしいし、何だか淫乱ぽい言い方でもあるから認める気にはならないけれど。 「シャワー？それとも続き？」 「……続き……」 　またキスをしながらしてくれるのだろうか？何て思っていたのが分かったのか、答えのようなキスを樹はくれた。